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日本の訴訟・仲裁に関する説明の中国語訳

【コラム】

日本の訴訟・仲裁に関する説明の中国語訳を作成しました。
ご興味がありそうな中国人クライアント様にご展開下さい。

中国語訳資料

This is a Mandarin translation of our article on the litigation and arbitration in Japan. We hope this will be of help to you and/or Chinese clients.

日弁連 海外贈賄防止ガイダンス

【コラム】

今年(2016年)7月,日弁連が海外贈賄防止ガイダンス(手引,全18頁)を作成しました。
参考になるポイントを,以下にご案内差し上げます。

1 ファシリテーション・ペイメントの原則禁止

去年(2015年)7月の経産省のガイドライン(外国公務員贈賄防止指針)の改訂を受けて, ファシリテーション・ペイメント(FP,通常の行政サービスの円滑化のための少額の支払)につき,厳しめの指摘をしています。

昨年まで通用していた経産省の旧ガイドラインは,FPにつき,やや甘めの記載をしていました。

ところが,昨年7月のガイドライン改訂で,FPにつき,経産省も「原則として支払禁止」という厳しめの定めに変更しました。
 
今回の日弁連のガイダンスも,FPの支払禁止を会社として明示するよう指摘しています。
 
2 リスクベース・アプローチの強調

日本企業には余り馴染みがない「リスクベース・アプローチ」(贈賄リスクの高い事業活動に対して重点的に人的物的資源を配分する)を強調しています。

さらに,同アプローチの前提となる「リスクアセスメント」の具体的方法にまで,以下のとおり踏み込んでいます。

(1) 地理的アセスメント
国・地域が,Transparency InternationalのCorruption Perception Indexランキングで何位か?など
 
(2) 業界的アセスメント 
商社,医療,製薬,防衛,資源,建設,不動産,運輸,金融はリスクが高いといえます。
 
(3) 取引形態別のアセスメント
  入札,通関,許認可,工場建設等が絡むと,贈賄リスクは高まります。
 
(4) 防止体制のアセスメント
  ・ コンプライアンス意識
・ ガイドラインの有無・充実度(長らく改定されずに古かったりしないか)
・ 組織体制 人員が十分か
・ トレーニングの頻度等
・ 社内通報制度

3 贈賄防止デューデリジェンス

大きなデユーデリジェンスをする際に,対象会社の贈賄防止体制を精査する場合があります。この場合の考慮要素として,以下の要素を挙げています。
 
(1) 経営トップのコンプライアンス意識
  経産省や日弁連のガイドライン・ガイダンスを推奨して,贈賄防止コンプライアンス体制構築へ努力しているか,など
 
(2) 体制
 ・ 接待・贈答・FP等の支出ルール
 ・ 現金口座管理
 ・ 内部通報状況
 ・ 会計制度の充実度
 
(3) その他チェックリスト
 ・ コンサル等の第三者への依存度
 ・ 第三国への支払の有無
 ・ 許認可・通関費用の支払
 ・ 政府関係者の親族の雇用
 ・ 関係者の前科・処分歴等

4 日弁連ガイダンスの目次

日弁連ガイダンスの目次は,以下のとおりです。

第1章 海外贈賄防止体制の整備

第1条 経営トップがとるべき姿勢と行動
第2条 リスクベース・アプローチ
第3条 基本方針及び社内規程の策定
第4条 組織体制
第5条 第三者の管理
第6条 教育
第7条 モニタリングと継続的改善
第8条 ファシリテーション・ペイメント
第9条 記録化

第2章 有事の対応(危機管理)

第10条 有事の定義
第11条 外国公務員等から賄賂の不当要求を受けた場合の有事対応
第12条 外国公務員等に賄賂を供与・申込み・約束した事実を把握した場合(その 可能性を把握した場合を含む)の有事対応
第13条 有事対応(危機管理)体制第14条 記録化

第3章 会社管理・企業買収

第15条 親会社による子会社の海外贈賄防止体制に対する支援
第16条 企業買収

第4章 その他

第17条 情報開示
第18条 本ガイダンス(手引)の実践表明

以上

2016年9月30日 久保利英明弁護士講演

【コラム】

先日、日本IPBAの会で、弁護士の久保利英明先生をお招きして、「世界へ羽ばたけ!」という題で講演していただきました。




その要旨及び印象に残ったお話を、ご展開差し上げます。



⑴ 常に新しい分野に挑戦

エンタメ、株主総会、ガバナンス、社外役員、ロースクール、第三者委員会、スポーツ、などなど。こんな弁護士はもう出ないかも。



⑵ 裁判官を感動させる書面を書け

「チボー家の人々」にちなんだ、「○○の人々」という小説を書くくらいの気概で書かないと、裁判官の心は動かされない、というエピソード。



⑶ どんな仕事でもクライアント獲得の手段に

ヤクザのような債権者でも、クライアントにしてしまう気概で。



⑷ 弁護士業務にも定石がある

東大入学時に、「数学は暗記だ」と宣った予備校教師からヒントを受けて。下手の考え休むに似たり。



⑸ コミュニケーション能力とは、「目を見て、大きな声で、にっこり挨拶」

私はあなたが好きですよ、と示すこと。



⑹ 弁護士に必要なのは3Yー勇気、優しさ、柔らか頭

検察修習で取調修習を拒否した気概でも、3Yから。

他に、情報を集めるためには発信するしかない、など。



⑺ 食べ過ぎないで健康管理

1日2食から、今は1日1食に。

2016年9月24日 「飛躍型組織」について

【コラム】

シンギュラリティー大学では,加速度的(exponential)に進歩する世界において,破壊的(disruptive)な存在価値を持つ企業を,「飛躍型企業」(Exponential Organization,略してExO)として奨励しています。
飛躍型企業は、「加速度的に進化する技術に基づく新しい組織運営の方法を駆使し、競合他社と比べて非常に大きい(少なくとも10倍以上の)価値や影響を生み出せる企業」と定義されます。既存業界を破壊しつつある,airbnbやUBERやTeslaが好例です。
飛躍型企業における特質は,(1)外部的特質と,(2)内部的特質の2つに分けて分類されます。それぞれ5つずつ,計10個の特質があります。
この特質を備えていればいるほど,米国Fortune100企業の時価総額が高い,というデータもあります。
(1) 外部的特質
 5つの外部的特質は,それぞれの頭文字から,「SCALE」と呼ばれます。
 S - Staff on demand オンデマンド型の人材調達
   正社員等の固定化した人員を抱え込むのではなく,必要に応じて柔軟に人材を調達します。
   「従業員の存在」それ自体が企業の機動力を減殺する,ということがあります。
「雇用」から「アライアンス」という方向への動きもありますね。
C - Community & Crowd コミュニティ&クラウド
   コミュニティは,企業のコアな応援集団です。メンバー,元メンバー,協力会社,仕入先,顧客,ユーザー,ファンから構成されます。
   コミュニティは,商品・サービス向上へのフィードバックを与えてくれるばかりではなく,人材も供給してくれます。
   「コミュニティを築き,公の場で物事を進めれば,適切な人材を探す必要はない。彼らの方から私たちを見つけてくれる」。
   クラウド ? 資金調達のみならず,デザイン,流通,マーケティング,販売等,あらゆる場面で,クラウドの知恵と規模を活用することができます。
   「世界で最も優秀な人々は,あなたのためには働いていない」。そう,みなさんの企業を活かす知性は,社内ではなく,社外にいるのです。 
A - Algorithm アルゴリズム
   アマゾンのおすすめ機能,フェイスブックのフィードなど,アルゴリズムは今や多くのサービスに用いられています。IoTやディープラーニングの発達で,じきに,ほぼすべてのサービスが,利用者ごとにカスタマイズされます。ガン検知も,もう人間よりAIの方が優れています。
   今,世界中に,ものすごい(エクスポネンシャルな)勢いで,「究極の効率化」が進行しています。
L - Leveraged Assets 外部資産の活用
   時代は,所有ではなく,アクセスです。マイカー所有は,早晩,「馬を飼う」こと同様のイカれた所業になるでしょう。シェアリング・エコノミーの勢いは止まりません。
   「何かを手放すことは,未来を手にすること」。
   
E- Engagement エンゲージメント
   マイレージやクーポン等のエンゲージメント(参加促進ツール)が,顧客からのフィードバック・ロイヤルティを促進します。
   ゲーミフィケーション(ゲーム化),報酬付きコンテストなどが,ExOの代表的なエンゲージメントといえます。
(2) 内部的特質
 5つの内部的特質は,それぞれの頭文字から,「IDEAS」と呼ばれます。
 I - Interface インターフェース
  情報のフィルタリングとマッチングを行うプロセス。アルゴリズムにより自動化してきています。UBERのドライバー検索,Google のAdwordsやApple のAppstoreが典型です。
D - Dashboard ダッシュボード
  組織の状態を測定・管理する手段。組織内のだれもがリアルタイムでアクセスできる。
  OKR(Objectives and Key Results)により,個人・チームの目標達成を追跡する手法もあります。
E - Experiment 実験
  仮説を検証し,常に実験を行う。最大のリスクは,リスクを取らないこと。
  リーンスタートアップの奨励。積極的に失敗しようとする姿勢が大事。
A - Autonomy 自律型組織
  自らを組織する力があり,多様なバックグランドを持つ人が集まる,一定の権限を移譲されたチーム。
  よりDemandingになっている消費者を満足させるためには,組織として「自律」型である必要があります。
S - Social technologiesソーシャル技術
  ファイル共有やテレプレゼンスにより,従業員間の親密度が増し,意思決定時間のずれが短縮され,組織内の知識が向上し,セレンディピティも増加します。

2016年9月24日 直近のセミナーのお知らせ

【コラム】

代表弁護士,中山達樹の直近のセミナーを再度お知らせさせて頂きます。
残席のあるセミナーもございますので,ご参加をお待ち申し上げております。

1.2016年9月30日(金)14時~17時
「海外主要国の比較を通じて考える実務的な『グローバル・コンプライアンス対策』」
 内容:https://www.bri.or.jp/seminar/54073

2.2016年10月14日(金)14時~17時
「腐敗防止・労務に関するグローバルコンプライアンス」

 内容:http://www.nkymlaw.jp/pdf/161014.pdf

3.2016年10月17日(月)13時15分~16時15分
「東南アジアの腐敗防止・独禁法(競争法)徹底リスク分析と実効的な対応策」
 内容:http://www.nkymlaw.jp/pdf/161017.pdf

4.2016年10月19日(水)9時30分~12時30分
「タイ ビジネス法のポイント」
 内容:http://www.ovta.or.jp/announce/2810th4.html

5.2016年10月21日(金)9時30分~11時30分
「カンボジア・ラオス・バングラデシュの徹底比較と現地法務並びにコンプライアンス対策」
 内容:http://www.fng-net.co.jp/seminar/smn3124.html

6.2016年10月21日(金)14時~17時
「カンボジア,ラオス,バングラデシュの進出法務と危機管理・BCP対策」
 内容:https://www.bri.or.jp/seminar/55759

2016年9月20日 「タイ ビジネス法のポイント」セミナーのご案内

【コラム】

10月19日(水)9:30~12:30に海外派遣前研修「タイ ビジネス法のポイント」を東京・八重洲にて行います。
主催:一般財団法人 海外職業訓練協会(OVTA)
内容:申込書をご確認頂き、皆様のご参加をお待ちしております。

http://www.ovta.or.jp/announce/2810th4.html

2016年9月14日 「東南アジアの腐敗防止・独禁法(競争法)徹底リスク分析と実効的な対応策」セミナーを行います

【コラム】

10月17日(月)13時15分~16時15分,代表弁護士中山達樹が,「東南アジアの腐敗防止・独禁法(競争法)徹底リスク分析と実効的な対応策」セミナーを,東京・虎ノ門にて行います。
主催:株式会社日本ナレッジセンター(電話03-5511-8668)
皆様のご参加をお待ちしております。

2016年9月9日 得重 貴史弁護士のカリフォリニア大学バークレー校のレポート

【コラム】

得重 貴史弁護士のカリフォリニア大学バークレー校のレポートです。

2016年8月29日 シンガポール紛争解決セミナー

【コラム】

7月22日に,IPBA(環太平洋法曹協会)のシンガポール弁護士スレッシュ・ディヴヤナーザン氏を招き,IPBA日本として,シンガポール紛争解決セミナーを行いました。その概要をご報告差し上げます。

■ 新しい国際紛争解決手段

シンガポールは,シンガポール国際仲裁センター(SIAC)を擁し,国際紛争の解決地として目覚ましい進展を遂げています。

そのシンガポールが,一昨年と昨年,さらに新たな紛争解決方法を提示しました。国際調停センター(SIMC)と,国際商事裁判所(SICC)です。

■ 問題意識 ー 国際仲裁のデメリット

国際仲裁では,以下2点をデメリットとして挙げることができます。

 ・仲裁人費用等を含めたコストがかかる
 ・解決までの時間がかかる(それでも,上訴等を含めた裁判よりは早期になることが多い)

このコストと時間という問題点を克服するために,以下の方法が考え出されました。

■ シンガポール国際調停センター(SIMC)

 2014年に新設されました。仲裁ではなく「調停」を専門的に扱うという点で,稀有な国際機関です。

(1) メリット
 ・早期解決が望める
 ・安価である
 ・当事者が主導権を握れる
 ・解決方法がフレキシブル
 ・当事者の友好的関係を継続できる
  …いわゆる「日本的解決」を志向できるという点で,有用な手続と思います。

(2) デメリット
 ・調停であるため,裁判等と異なり,執行力はありません。
 ・あまり早期に,証拠も見ずに調停を行うことが,本当に当事者の利益に資するかは,ケース・バイ・ケースで検討が必要です。証拠を吟味してもらって中立的な専門家に判断してもらった方がいい場合もあるからです。

■ シンガポール国際商事裁判所(SICC)

 2015年に新設されました。国内的な効力しか持たない「裁判」を,国際的にするものとして,「裁判」の定義にも挑戦するような,意欲的な試みと思います。

(1) メリット
 ・早期解決が望める
 ・安価である
 ・(一定要件の下,)仲裁・調停に合意していない第三者を巻き込むことができる

(2) デメリット
  現状では,国際的に執行できるのは,ハーグ条約に批准している27ヶ国のみ。ただし今後拡大の方向

■ Arb-Med-Arb(仲裁における調停前置手続)

SIACとSIMCの合作により,仲裁開始後すぐに調停を行うことで,早期の解決を促進する制度です。

調停部分には調停のメリット・デメリットが当てはまります。また,調停で終わればいいですが,調停が奏功せずに結局仲裁に進むのであれば,単なる仲裁よりもかえって時間がかかってしまうのではないか,という懸念があります。

■ まとめ

調停のみで国際紛争が解決するかは疑問符がつくところですので,SIMCを単独で利用することは躊躇するところですが,Arb-Med-Arb(仲裁における調停前置手続)の有用性は,より探っていきたいと思います。

また,SICCについては,現状では執行力に限界があるようですが,今後,どのような発展を見せるのか,注目したいところです。

ロンドン・レポート

【コラム】

ロンドンに行って参りましたので,簡単にロンドン事情をご報告差し上げます。皆様の視野を広げる一助になれば幸いです。


■ 目的

法的な情報収集・ネットワーキングというよりも,私のライフテーマでもある,日本人の「多様性・自由化・国際化・西海岸化」について,現地にいる日本人にインタビューする目的で渡英しました。

ミュンヘンに行くついでに,週末に1日だけというタイトスケジュールだったことや,現地弁護士の都合等もあり,残念ながら現地弁護士との会合は実現しませんでした。

■ 気温

8月下旬なのに気温15度… 東京と20度近い温度差にびっくりしました。

■ wi-fi

ロンドン郊外のヒースロー空港から,市街中心部の駅へ向かう高速鉄道内でも,wi-fiが通じました。

また,Steet Wi-fiといって,屋外でも,人通りの多いところでは,wi-fiが使えました。この「屋外でもwi-fi」というのは,今までで訪問した国ではない,初めての経験でした。

日本でも東京五輪に向けて,どんどん無料wi-fiが整備されてほしいと思います。

■ UBER

日本のタクシーより高い?タクシーよりも,半額くらいという評判のUBERを利用しました。

Street Wi-fiが使える,主要駅の外から利用できたのは良かったです。値段も,日本のタクシーレベルか,それ以下かというイメージでした。

■ レンタルサイクル

ロンドン市内はほとんどすべて,レンタルサイクルで移動しました。クレジットカードを使って,最初の2ユーロ(約250円,24時間有効)以外は,30分以内に返却すれば無料,というシステムは,ニューヨークと全く同じでした。

ニューヨークよりはスタンド(返却・レンタル場所)が少ないと感じました。

ロンドンでもニューヨークでも同じシステムを利用しているのなら,東京でも同じシステムを利用してしまった方が,分かりやすいと思いました。

■ 地下鉄

狭いし,冷暖房がないので,暑かった… 東京の地下鉄の快適さを思いました。

■ Airbnb

住所表記が不正確だったようで,チェックインするのに時間が掛かりました。Facetimeで直接貸主と連絡をして事なきを得ましたが,携帯端末の充電が切れていればそれもできなかったので,携帯での直接の連絡の確保は必須と思いました。

同居人とルームシェアする設定になっており(事務局任せにしていたので,当日まで知らなかった…),同居人がGAYのレバノン人でした。

私は空手黒帯なので,身の危険は感じませんでしたが,そうでない人は,同居人の有無は事前にチェックした方が良さそうです。同居人とはディナーを共にしたり(人生初のレバノン料理を味わいました),空港までの車(25ユーロ,UBERよりもタクシーよりも格安!)を手配してもらったり,とても親切にしてもらいました。

■ サイクリスト・フレンドリー

車道と歩道との間に,自転車専用道路が多く整備されていました(原則は車道通行)。交通がなくても,赤信号の前では止まるのは,印象的でした。

まあ,スリランカ人も,東京で,「赤信号をみんな守っている」ことに驚いていましたから,東京と大差はないのかもしれませんが。

ニューヨークでは,レンタルサイクルをする人は,あまり赤信号を守っていなかったので,ロンドンとは顕著な違いがありました。

■ 散歩・散策

ロンドンでは,ハイドパークなどの公園が整備されてたり,テムズ川沿いにも歩行者専用の散策用の小路が整備されていたり,散歩・散策が,日本人より生活の一部になっているであろうことを肌で感じました。現地の友人に聞けば,郊外では「コモン(ズ)」と言われる共有地で散策を楽しむ僧です。

この散歩への親しみはミュンヘンでも同様でした。「緑や自然とふれ合うこと」を欧州人は日本人より重視するのでしょうか。

■ 人種構成

中東からの人が多く,アジア人は少ないと感じました。例えば,アメリカ等に比べても,日本料理屋はだいぶ少ないのではと感じました。

数年前にサンクトペテルブルグに行った時も「コーカソイドばかりでアジア人が少ない」と感じましたが,それに近い感覚を持ちました。

ただ,ニューヨークなどに比しても,「世界で最も人種構成が豊かな都市」(の1つ)だけあって(疎外感がないので),居心地の良さを肌で感じました。

そう考えると,単一民族に近い日本は,本質的に,外国人に対して,最も「疎外感」を与えてしまう国なのではと考えました。

今後の長い目での日本の発展を考えると,ロンドンを見習って,多様性をより取り入れる(移民を受け入れるなどして)方向を検討すべきと思いました。ロンドンのように疎外感がない国だと,定住までしたくなる,その気持ちを実感することができました。

ミュンヘン・レポート

【コラム】

ドイツはミュンヘンに行って参りましたので,ご報告差し上げます。

■ 目的

世界の45歳以下の弁護士で構成する若手法曹国際協会(AIJA。欧州人が中心)の会合に参加してきました。AIJAについては別稿で述べます。

主な目的は,
① IPBA(環太平洋法曹協会)をよりよくするために,他の団体から国際組織運営を学ぶ,
② IPBAオフィサー(役員)として,AIJAとの連携を模索する,
③ ネットワーキング(国際法務をするためには,その国の弁護士を知らないといけない),
④ 欧州人の思考・行動様式を学ぶ,
でした。

加えて,⑤新しいエコシステム(Airbnb, UBER)を試す,ということも付随的な目的だったと言えるかもしれません。

■ 欧州とアジアの都市の違い

欧州とアジアの都市の違いは,①自転車専用道路の整備,②電線・電柱だと思います。いずれも欧州が進んでおり,アジアは遅れている。私は,日本が電線を地中化しないのは恥ずかしいことだと思っています。

アジアでは,地中化するコストが10倍くらいかかるから,電柱が乱立… アジア人の美醜感覚が劣るということか,それとも,「景観よりコスト削減を優先する」という経済重視の姿勢のせいなのか…

■ サイクリストの多さ

ミュンヘンでは自転車利用者も多かったですが,これは,自転車専用道路が整備されているから利用者が多いのか,それとも,利用者が多いから整備が進んだのか,いずれなのでしょうか。。
分かる方いたら,教えていただけますでしょうか。

なお,自転車のタイヤはどれも太く,耐久性が高そうでした。また,自転車専用道路は,ロンドンとは異なり,原則として歩道上にありました。

■ UBER

私は,初めて訪問する国では,利便性を肌で確かめたいという好奇心から,公共交通機関にチャレンジすることが多いです。しかし,ドイツ語だけの国(英語表記は多くない)でやろうとしたらタフでした…
主要駅までのキップを買ったり,どこで降りるかを確認したり,バスを利用しようと思ったら逆方向に乗ったり… 
 
主要駅ではwi-fiつながらないので(だからUBER使えず),結局そこからはタクシーを利用しました。空港から宿泊先Airbnbまで,2時間近くも結局かかったかな?

しかし,帰国時にはUBERを利用したら,快適この上なし。30分。43ユーロ(タクシーだと60−70ユーロ)。現金も要らない。

今後は,public transportation を利用してみたいという好奇心は,UBERに比べると,時間と労力において,とてつもない代償を払うことを覚悟すべきですね。

というか,UBER自体が,いずれ, 「public」 な,移動手段になってしまうのだと思います。

■ Airbnb

若いカップルのアパート(80平米くらい)に,一部屋をあてがわれて,ルームシェア。帰りは鍵を置いて帰る。

バスルームもシェアなので,好きな時間にトイレ・シャワーが使えなかったりという不便さはあります。

ルームシェアの一番の利点は,「現地人と会話ができること」かと思います。私のように好奇心旺盛な人にはいいと思います。今後のすべての海外旅行はAirbnbでもいいかなと思いました。

例えば,ドイツの市井の人は,Japanを「ヤーパン」とドイツ語のまま発音するのだな,とか,ホテルでは得られない情報を得ることができました。

でもwi-fiは当然使えるし,これで(ベッドルームを提供するだけで)一泊8000円くらいが稼げるのなら,部屋を提供する側も,良いビジネスだなと思いました。

■ その他ミュンヘン雑感

・自転車で半日で観光できるくらいの小さい街。人口140万人。

・English Garden という新宿御苑をだいぶ大きくしたような公園が特徴的。

・ロンドン同様,ミュンヘンでも,散策というか散歩というか,「緑とふれあうこと」が,日常生活の中で大切にされている実感を得ました。日本や他のアジアとの違いです。

・夜道は暗くても安全? 真夜中・真っ暗闇の中を何度も歩きました。

・ロンドンでもそうでしたが,歩道者も自転車も,交通がなくても,赤信号で止まることが多い。罰則があるから…とドイツ人らしい理由があるようです。

・ミュンヘン名物であるEnglish Garden内の「川泳ぎ」経験もしました。楽しかったですが,体が冷える中で(だから筋肉も上手く動かない),川の流れの中で泳ぐのは難しく,溺れるというメカニズムが少し分かった気がしました。

・ドイツと言えば移民ですが,移民の勢力というか圧力を特に感じることはありませんでした。

AIJA(国際若手法曹協会)・レポート

【コラム】

AIJA(国際若手法曹協会,International Association of Young Lawyers)のミュンヘン年次総会に出席してきましたので,ご報告差し上げます。

■ 概要

54年の歴史ある団体。基本は弁護士の交流と意見交換。IPBAと異なり,人権も扱います。

なぜ欧州人ばかりなの?というのが気になりますが。メンバーは,世界80カ国以上の弁護士が3000人を超えます。

45歳を過ぎると正会員になれない(役員の選挙権がなくなる)ので,参加しない人が多くなる。

■ 年次総会

今回の年次総会は,参加者600人。うち日本からは10名のみ。インドから7名。中韓シンガポールからもほとんどなし。アメリカ人も少ないのが気になりました。欧州中心主義?

4日に及ぶ年次総会は,IPBAより一日長い。でもその分,ソーシャル/カジュアルイベントも多い。

IPBAのように,カジュアルな雰囲気が特徴的で,居心地がいい団体でした。ディナーに続く,パーティは毎晩ありました。

■ 日本との地理的・心理的距離

8割くらいの参加者は,日本に来たことがないそうです。これはちょっと驚きでした。

欧州から見ると,極東日本は,地理的にも心理的にも遠いということを改めて実感しました。

■ 法律セッション

Scientific Programと呼んで,競争法とか環境法とかいろんな法分野をカバー。

来年の東京大会のプロモのため,あまり参加はできませんでしたが,IPBAより数は多くなく,大講堂で,かつ,時間も長い?のかと感じました。

■ ソーシャルイベント

朝ジョギングをするのはいいと思いました。5キロ強ほど。参加者は5−15人でした。

DAY OUTというイベントで,10人のチームを作って,街を散策しながら,アプリを使って,その場所に関連する質問(この建物は何年に建築?など)に回答するというソーシャルゲームは面白かった。ポケモンGOにやや近いものでしょうか。

■ ディクテーション

業務効率化等をテーマにしたあるセッションの挙手によるデータですが,日頃,タイプしないでディクテーション(音声入力+自動翻訳)で仕事をする弁護士が,2割−3割ほどいました。

アルファベットでは漢字変換がないため,アルファベットを使う言語圏では,ディクテーションサービスが発達しているようです。

■ ヨーロッパ人

こういう一括り・十把一絡げにすることがそもそもできるか,という問題もありますが,雑感をあえて述べてみます。

(1) 欧州人らしいReserved(控えめ,それほど社交的でない,ノリが悪い)な気質の具体例:
 
・こちらから話しかけないと,話しかけてこない
 …これは,(人種的偏見のため)アジア人に対してより顕著なのかどうか,もう少し知りたいところです。

・Moderateなダンス 
 …海外の弁護士のネットワーキングでは,夜のパーティではダンスをすることが多いです。総じて,あまりFUNKYでSEXYではない人が多いかな…と思うこともありました。

ただ,以下に述べるように,私に「ステージ・ダイブ」をさせるノリの良さからすると,一概に欧州人が…と判断することは難しそうです。

総じて,まあアメリカ人ほど外交的ではないかな,と思うくらいで,私が持っていた印象を変える事実はあまりありませんでした。

(2) 欧州中心主義?

・AIJAという立派な組織(「世界を救うために,文化的障壁を越えよう」という代表の演説は,TEDに負けない,鳥肌モノでした)が,長年を掛けて,欧州以外に広がっていないこと自体が,何かを示唆しているのでしょうか?

・アジア人を見下すような偏見を感じた出来事もありました。ナイトクラブのダンスフロアでダンス中,おそらくオランダ人と思われる市井の人から,「Do you speak Dutch?」と訊かれたので,Noと答えたら,「ふんっ」て感じの対応をされまして… こういう経験は世界で初めてかもしれません。

(3) その他

・喫煙率は結構高いかも

・食事にサラダがないことがあったり…は想定通りです。

・日本ではメイドさんが居ない(女性が出産後に家事をせざるを得なくなる)のが問題ですが,欧州ではどうかと訊いたところ,概ね,「豊かな国では外国人メイドを,そうでない国では自国の清掃婦を雇う」ことで対処しているようでした。

・「ミュンヘンでは何ガロンのビールを飲むことになるかな?」とジョークを言ったら,真顔で「いや,ガロンじゃなくてリットルでしょ」と言われたのは,欧州では笑いのツボが違うからか,私の言いっぷりが不十分だったか。。

・ダンス盛り上がりすぎて,(主にラテン系の男性が?)怖がる女性を尻目に乱暴になったりすることもあった。
 …これは女性蔑視の現れか? アメリカは女性蔑視が根強いと聞いたことがありますが,欧州もしかりなのでしょうか。女性を社会で登用している(メルケルやメイのような宰相にまでなっている)こととどう関係するのか?は,引き続き考えたいところです。

■ ステージ・ダイブ

300?400?人くらいの参加者が,ビアホールで夕食後,プロのシンガーの歌うロックに合わせてダンスをしている際,私のダンスが参加者中最も目を引いたようでした。そのため,私独り壇上に呼ばれ,Tatsu はProfessional Dancerだとしてアナウンスされ,みんなの前で一人踊るという光栄に浴しました。

その後,ダンスで盛り上がった聴衆数百人の上を(手で持ち上げられて)ダイブして15?メートルくらい泳ぐ(ステージダイブ/モッシュダイブ)という稀有な経験もしました。私だけがステージに上ることが許されたり,プロシンガー自身が,歌いながらステージダイブ(スイム?)している私の写真を撮るなど,誠に誇らしい?経験でした。

こういう「悪ノリ」を私にさせるところからすると,欧州人を中心とするこの団体が果たしてReservedなのかということは疑問になってきます…。

■ 国際法務の今後

法務アドバイスというのは,基本的にその国の制度に基づくので,国境を超えない,というかドメスティック。その国の法務は,その国の弁護士に頼らざるを得ない。

そのため,海外法務情報や外国法に基づく具体的アドバイスが,日本語で容易に得られる時代が到達しない限り(シンギュラリティ時代の今,いくらICTやAIが発達するとしても,今後50年はないでしょう),こういう海外弁護士のネットワーキングの必要性は変わらないのでは,と感じました。

シンギュラリティ大学レポート

【コラム】

SU共同創設者のピーター・ディアマンディスが,「今後20年,なぜ生活コストは激減するか」という紹介をしています。非常に示唆的なので,その要旨を紹介します。

***

人工知能(AI)が,今後,人類の仕事を奪ったり,経済システムが破壊されたりすることを懸念する人もいます。

しかし,「生活コストの急速な無償化」について触れる人はいません。人類の基本的な欲求を満たすコストは,どんどん安くなっているのです。

エクスポネンシャルな科学技術の発達で,住居,移動,食事,健康,娯楽,衣服,教育等のコストは,最終的には,ゼロに近づきます。

起業家やCEOとして,この流れと影響を理解することは重要です−−今後の我々の思考様式を変えますので。

現在,我々は何にお金を使っているか

我々の支出は,似たり寄ったりです。

アメリカでは,2011年,75%以上の支出が,住居,移動,食事,保険,健康のために費やされました。

中国でも,食事,住居,移動,福祉のために大部分が支出されています。インドでも,食事や移動等が主な支出です(住居や健康への支出割合は低い)。

文化等の違いはあれ,人々の支出は,「移動,食事,健康,住居,エネルギー(水光熱費),教育,娯楽」の7分野に分類できます。

これらのコストが激減したらどうなるでしょうか?


急速な無償化 − その意味

「無償化」とは,テクノロジーの発達により,かつては高額だった商品・サービスが,安く,無料に近づくことを意味します。

写真について考えてみましょう。コダックの時代,写真は高価でした。カメラ,フィルム,現像等にお金がかかりました。今は,スマホの写真は無料です。フィルムも現像もありません。完全に無償化しました。

情報・リサーチもそうです。かつては,自分でデータを集めることは困難でしたし,人にリサーチを頼むとお金がかかりました。現在,グーグルの到来により,これらの情報収集は,無料で,しかも,1000倍も質が良くなっています。

通話やビデオもそうです。スカイプその他により,無償化されました。

他に,iTunes が音楽業界に,Uberが交通業界に,Airbnbがホテル業界に,Amazonが出版業界に,無償化をもたらしています。

1969年や1989年には課金されていた商品・サービスのうち,現在,90万ドル(約1億円)分が,無償化されています。我々のスマートフォンには,1億円相当のアプリがあるようなものです。

http://i2.wp.com/www.abundance360summit.com/podcast/wp-content/uploads/2016/07/Screen-Shot-2016-07-16-at-2.21.21-PM.png?zoom=2&w=800



















では,我々がお金を使っている7分野は,今後どのように無償化されるでしょうか。

(1) 移動
Uberなどにより,自動車業界は無償化されています。これは始まりにすぎません。

Uberが自動運転化すれば,さらに無償化が進みます。

自動車保険,自動車修理,駐車場,駐車場代,燃料費なども無料になります。移動コストは,マイカーを運転するより,10倍も安くなるでしょう。

これが移動に関する未来です。ゆくゆくは,最も貧しい人も,簡単に自由に移動できるようになります。

(2) 食事
この1世紀で,食料品コストは,13倍も安くなりました。この傾向は続きます。

http://i0.wp.com/www.abundance360summit.com/podcast/wp-content/uploads/2016/07/Demonitization2.png?zoom=2&w=800











さらに,垂直農業(場所を取らない室内栽培)が,より一層,コストを押し下げます(食料品コストの7割は,輸送費・保管費・人件費が占めていますから)。

また,遺伝子工学・生物学の発達により,単位面積あたりの収穫量も上がり,これも食料品コストを下げる要因になります。

(3) 健康
健康は,①診断,②手術,③治療及び④医薬品の4分野に分類できます。それぞれ見ていきましょう。

①診断:人工知能が,すでに医者よりも優れたガン診断を行っています。

②手術:そのうち,ロボットが,より高精度の手術をするようになるでしょう。

③治療:高齢者医療も,ロボットが最も上手に行うようになるでしょう。

④医薬品: 調剤も,人工知能が代替するようになるでしょう。そして,3Dプリンティング機器により,家庭で,その日のあなたの体調に最も適した薬を処方してくれるようになるかもしれません。

ゲノム配列に関するコストも,ムーアの法則の5倍以上の速さで,急速に無償化に近づいています。この技術により,あなたがどんな病気になりやすく,どんな薬が最も効くかを,適切に予期することができます。

http://i2.wp.com/www.abundance360summit.com/podcast/wp-content/uploads/2016/07/Demonitization3.png?zoom=2&resize=800%2C368


(4) 住居
なぜ住居にコストがかかるのでしょうか? 例えば,セントルイス郊外では,わずか1000万円で,マンハッタンの10億円マンションと同じ広さに住むことができます。

場所,場所,場所,です。人々は,職場や歓楽地に近い場所に住もうとするからです。

住居コストの無償化の原因は2つあります。1つは,ICT技術の発展により,家と職場の距離は無意味になります。職場から離れた安い土地に住むことができます。なぜなら−

 ・自動運転車 − 通勤時間が,読書,睡眠,娯楽,会議の時間に充てられます。90分の通勤は全く苦になりません。

 ・バーチャルリアリティー − 職場が,同僚がアバターとして働くバーチャルリアリティーだったらどうなるでしょうか? 通勤そのものが不要になるのです。起床後,バーチャルリアリティーにログインしさえすれば,農場からであろうが離島からであろうが,勤務を開始できます。

もう一つの住居コスト無償化の原因は,ロボットと3Dプリンティングです。これらにより,家の建築コストが急激に下がるのです。

例えば,WinSunは,3Dプリンティングで,6階建ての建物を建てました。


http://i1.wp.com/www.abundance360summit.com/podcast/wp-content/uploads/2016/07/Demonitization4.png?zoom=2&resize=800%2C349


(5) エネルギー
人類が1年間で消費するエネルギーの5000倍もの太陽光エネルギーが,わずか1時間足らずの間に,地球の表面に降り注いでいます。貧しい国により多くの太陽光が注いでいることは,富の分配のために,好都合でもあります。

太陽光コストは,キロワット時間あたり35円まで下がっています。今後,さらに下がるでしょう。

(6) 教育
教育コストは,多くの点ですでに無償化されています。みなさんが学生時代に学んだ知識は,オンラインで無料で得られますので。

CourseraやKhan Academyのみならず, ハーバードやMITやスタンフォード大でも,高度な授業を,何千時間分も,地球上でインターネットに接続できる人に公開しています。

これは始まりにすぎません。じきに,世界で最も素晴らしい教授はAIになり,廉価または無償で,人々の教育欲求を完全に満たしてくれるでしょう。

億万長者の子息も,貧者の子息も,同等で最高の教育を,無料で得られるようになるのです。

(7) 娯楽
ビデオやゲームのような娯楽は,かつては,それぞれの機器の購入が必要でした。

今では,ストリーミング,YouTube, Netflix や App Storeにより,遥かに多くの選択肢がありますし,これらは急速に無償化しています。

例えば,YouTubeには,インターネット利用者の3分の1を占める10億人以上の利用者がいて,毎日,何百時間も視聴されています。

2016年8月24日 シンギュラリティ大学「桃源郷」レポート

【コラム】

7月に,エグゼクティブ・プログラムで,SU共同創設者ピーター・ディアマンディスによる熱血講義を受けてきました。

彼は,著書『アバンダンス(桃源郷。恵まれ,満たされた世界)』(邦題:『楽観主義者の未来予測』)でも,テクノロジーの進歩がどれほど人類に貢献したかを説いています。


講義概要は以下のとおりです。

**

考え方,捉え方が重要です。今は,壮大な夢が実現し,一人の個人が世界を変えることができる時代です。こんな時代は未だかつてありませんでした。

データを見れば,世界に,何不自由のない「桃源郷」が到来することは明らかです。

たとえば,収入,寿命,食料入手率は,どんどん上昇しています。一方,エネルギー,移動やコミュニケーションにかかる費用は,激減しています。

テクノロジーの力により,不足しているものが,有り余るほどあふれ出てきます。

たとえば,ナポレオン3世の時代,アルミニウムは金を上回る,最も効果な貴金属でした。しかし今,世界にアルミはあふれています。現在,ダイヤモンドも廉価に生成されつつあります。ダイヤは「貴金属」ではなくなるのです。

我々は,「古き好き時代」をなつかしく思います。しかし,昔は,そんなにいい時代ではありませんでした。戦争はあり,寿命は短く,野蛮で…,また,生活するためだけに週に80時間も働いていました。

教育とヘルスケアのお陰で,家族あたりの子どもの数も減り,平均健康寿命は,40年も伸びようとしています。

自動車事故や航空事故も激減しています。

なんと素晴らしい時代に生きているのでしょう。

なぜこのような変化が起こったのでしょうか?

テクノロジーの,エクスポネンシャル(加速度的)な進化です。あらゆるものの,コストパフォーマンスは飛躍的に向上しています。

かつて,会社を立ち上げて軌道に乗せるだけで,5億円もかかりました。今は,わずか50万円で可能です。多くの人が起業して,多くのアイディアが実現できるのです。失敗する余裕,も生まれてきたのです。

億万長者になりたければ,10億人を助けましょう。今は,できます。そういう世界に生きているのです。

いくつかの例を具体的に見ていきましょう。

テクノロジー

1956年には,5メガバイトは150万円しました。2005年には,128 メガバイトが1万円に下がりました。今,1万円では,128 ギガバイトが手に入ります。

また,今のスマホの性能は,20年前のスパコンを上回ります。

このような,安くて早いテクノロジーが複合的に用いられると,予想もできない結果をもたらします。次世代のイノベーションが起きるのです。

我々の思考は,限定的で直線的となりがちです。しかし,今後は,グローバルに,エクスポネンシャルに,考えねばなりません。

エクスポネンシャル時代の「6 D」

テクノロジーの加速度的進歩を享受するためには,以下の「6D」を取り入れることが重要です。

① デジタル化−Digitized 
アナログデータがデジタル化されることが,スケールすることの第一歩です。

② 潜行−Deceptive
新技術は,いきなり陽の目を見ません。今をときめく3Dプリンティング技術自体も,30年も前から,実は存在していました。

③ 破壊−Disruptive
テクノロジーの普及は,文字通り「破壊的」なインパクトを持っています。
Uberがタクシー業界を,Airbnbがホテル業界を脅かしているように,業界自体が「破壊」される時代です。

④ 非物質化−Dematerialized
みなさんのお手元のスマホに,「非物質化」した情報・サービスが,いくつあることでしょう。

⑤ 非収益化・無償化−Demonetized
通信コストはゼロに近づきます。みなさんのスマホの「フリー」アプリは,かつては1億円相当の価値を持っていました。スカイプやファイスタイムを,みなさんも利用しているはずです。

⑥ 大衆化−Democratized
非物質化と非収益化すれば,市場シェアが広がります。あっという間に,グローバル化します。ガレージで遊んでいる子どもが遊び半分で作ったガジェットが,世界の10億人に広がるのです。

これらが現実です。これにより,業界が「破壊」されます。アップルが,通信業界や音楽業界を破壊したように。

世界のオンライン化

1000年前,社会にインパクトを与えることができるのは,一部の王侯貴族のみでした。その影響も,国内/地域限定でした。

100年前,大企業が出現し,社会的インパクトの裾野は広がりました。しかし,まだ限定的でした。

今,人類全てにインパクトを与えることができます。世界を変えようと本気で思っている人は,変えることができるのです。

2010年の,世界のインターネット普及率は,23%でした。2020年には,60%になります。FacebookやGoogleその他の企業は,この普及率を上げようと躍起になっています。

今後,30億人が,オンライン化するのです。そして,この30億人は,我々がネットを利用し始めた20年前の状態で登場するのではありません。グーグル翻訳と高速アクセスという恵まれた状態で,登場するのです。

そして,この30億人は,それぞれ斬新なアイディアを抱きながら,登場するのです。だからこそ,変化の速度が,加速度的(エクスポネンシャル)になるのです。

「月面着陸」(Moonshot)を目指せ

月面着陸(Moonshot)とは,10%の改善ではなく,10倍の革新を求めることです。安価なリソースに恵まれている現在,10%の改善を求めている場合ではありません。

10倍を目指すことは,もはや100倍難しいことではなくなりました。それどころか,10倍を目指すことで,100倍以上の結果が得られます。

私が目指しているMoonshotは,以下のとおりです。

1) 人間の寿命を伸ばす

どうやって,健康寿命を30〜40年伸ばせばいいでしょうか?


世界最大の,ゲノム配列施設を設立しました。2020年には,10億人超の遺伝子情報を集めます。

統合された医療情報が,健康な遺伝子を作成することを可能にします。マイクロバイオーム(体内微生物)や,ディープラーニングを活用して,癌を最も早く発見します。

ヘルスケア革命を起こすというのが我々のミッションです。

医療は,よりカスタマイズされ,より予防的になります。病気になってから医者に行くというのは,車を大破させてから修理工場に出すようなものになります。

2) 資源へのアクセス向上

地球に近い小惑星には,プラチナ,ウラニウム,イリジウム等の鉱物資源があふれています。

アメリカ大統領は,「宇宙で獲得したもの」を所有することができる,という法案に署名しました。

これらの宇宙由来の鉱物は,農業や石油生産へも好影響を与えることが分かっています。

Moonshotを目指すことで,地球上では想像もできなかったことが,起こりつつあるのです。

3) 世界の大問題の克服

私が創設したXプライズ財団では,教育,生命工学,環境その他に,報奨金を与えています。

たとえば,読み書きのできない子どもに18か月で読み書きを教えるなどのプロジェクトに,オープンソースで,知恵を集めています。集まった知恵を凝縮したアプリを開発し,タンザニアで,ローンチする予定です。

この財団では,だれが正解を知っているか,を重視しません。そんなことは分かりません。問題提起をして,報奨金を与え,正解が来るのを待っているだけです。

2016年8月22日 シンギュラリティ大学「サイバー犯罪」レポート

【コラム】

先月参加した,シンギュラリティ大学のエグゼクティブ・プログラムで,マーク・グッドマン氏の「未来の犯罪(Future Crimes)」に関する講義がとても役に立ったので,概要をご紹介します。


■ 総論
講義の基本コンセプトは,「未来はもうここにあるーただ不公平に分配されているだけだ」。

我々が,サイバー犯罪,より具体的には,ハッキングの怖さを知らなさすぎるのでは?という問題提起です。

■ テクノロジーの悪用
「エクスポネンシャル」の概念及びICTは,善人のためだけではなく,悪人に悪用され得る。ムーアの法則(Moore’s Law) は,アウトローのための「Moore’s Outlaws」になり得る,なんて冗談も。

歴史的に見ても,犯罪者は,警察より先に,携帯電話を手にしていた。犯罪者は,テクノロジーのアーリー・アダプター(初期利用者)だから。最高のイノベーションが,闇組織から生まれることもある。 
       
「犯罪」と「戦争」の垣根がなくなる世の中に。2019年までに,サイバー犯罪業界が,2兆ドルビジネスになる,という予測もあります。

■ ロボ
犯罪は,これまでは,人間が犯すものだった。だから,一定の倫理的な歯止めが効くという限界があった。

ところが,今後は,人工知能・アルゴリズムが犯罪を犯す時代に? そうすると,倫理的な歯止めが効かず,文字通りエクスポネンシャルな,度を超えた犯罪が広がる? つまり,ワトソンが,「犯罪生物」になってしまった場合,犯罪の規模・程度に限度がなくなる!

3Dも犯罪に。ロボットが人を殺すなど。まあ映画で観るようなSFの世界が現実に。

■ ドローン
ドローンが,刑務所の塀や国境を超えるのは容易。アマゾンがドローン配達をする前に,麻薬はドローン配達される。

UVカメラ付きドローンを使って,大麻栽培をしている場所を突き止め(大麻栽培をすると室温が上がる),そこから大麻を盗むという犯罪も実際にある。

■ IoT
IoTは,それこそ,「なんでもハックされる世の中-Internet of (hackable) things」の到来と同義。

2020年までに,500億個のデバイスがオンライン化する。みんなハッキング対象です。。

■ ハッキング
コードを支配する者は,世界を支配する(Control the code; control the world)。。ポケモンGoを用いて,子どもを一箇所に集めて,携帯電話を盗むという犯罪も生じている。

自動運転車をハックすれば,暴走して事故を発生させることは容易。殺人兵器になる。

ハッキング等の不正を社内で見破る可能性はわずか6%。見破るのに平均で211日もかかっている。その間に資金流用することは簡単です…

■ 心構え
ハッキングは危険だが,だからといって,科学技術が悪いわけではない。それは,人類の最初のテクノロジーである「火」が,冬の暖や調理に利用されたと同時に,人を焼き殺すことにも利用されたのと同様。

ICT分野では,パスワードによる保護が重要。だけれども,人々のパスワード管理は甘すぎる。ハッカーからしたら,パスワードを見破るのは簡単。

現状では1000億ドルがセキュリティに投資されているが,ほとんどが,ハードに投資され,ソフト(我々の意識)へは投資されていない。意識改革が一番重要なのに。

ハッキングの原因を分析すると,95%が人為的なミスに起因する。一方,セキュリティ関連予算のわずか1.4%しか,トレーニングに費やされていない! もっとサイバー犯罪トレーニング・プログラムに時間とコストを掛けないと!

サイバー・セキュリティは,会社の一部門ではなく,我々の態度であるべき(Cyber security can’t just be a department. It has to be an attitude)!

2016年8月19日 シリコンバレーにあるシンギュラリティ大学(SU)のエグゼクティブ・プログラム(EP)に1週間参加して参りました!

【コラム】

概要をお伝えします。


■ 出席の動機
AIの発達などで,弁護士業界もどうなるか?という状況で,世界最先端の知識を吸収したい。

また,エッジの効いた,世界最高峰の人材に囲まれて刺激を受けたい,というのが主な動機です。人間は「頻繁に会う5人の平均」ですから。

■ シリコンバレー
もちろん毎日快晴。この天気こそが,シリコンバレーの最大の特徴と言う人もいます。積極的なマインドセットではなく。

人間の気質は気候に大きく影響されます。毎日抜けるような青空の下で過ごすと,人間の気質も変わるのでしょうか。漱石の鬱はロンドンの曇天が原因でした。

1日の寒暖の差は結構あります。真夏ですが,朝6時は結構冷えて,短パンTシャツでランニングに行くのは勇気が要ります。緯度は東京より高い。

夜9時くらいまで明るい。昼が長いのも,恵まれた環境だと思いました。

滞在したクパティーノ近くにはアップル本社があり,建設中の新社屋は,東京ドーム15倍。宇宙船のようでした。私が今までの人生で見た中で,最大の建築物でした。

なお,一週間の滞在中,UBERで移動したりしたこともあり,現金を1ドルも使いませんでした。現金決済は時代遅れになりつつあります。仮想通貨(ビットコイン)をやや身近に感じました。

■ シンギュラリティ大学
Google等が出資して,来るべき「シンギュラリティ」(特異点。2045年ころに,コンピュータが人間の知能を超えたりすること)に備え,最先端のテクノロジーや考えの進化を学ぶところです。
未来学者のレイ・カーツワイル等が創立者として,2008年に設立されました。

主にIT分野における「加速度的」(エクスポネンシャル)な進化により,各業界に「破壊的」(Disruptive)な変化が起きていることに,着目しています。ちなみにエクスポネンシャルというのは,ジオメトリック(等比級数的)と同義です。

「破壊」の典型例としては,UBERがタクシー業界を,また,airbnbがホテル業界を脅かしていること,が挙げられます。同業者ではない他業界からの「破壊」が昨今の特徴です。

このエクスポネンシャル思考の根底には,「ムーアの法則」(集積回路上のトランジスタ数は,18ヶ月ごとに2倍になる)に対する信奉というか信頼があります。つまり,「科学技術の等比級数的・加速度的進歩」が世界・社会に与える大きなインパクトを重要視しています。ITやICTやIoTの時代!

■ EP -プログラム概要
(1)出席者
105人の参加者が計35カ国から集まりました。西欧から多く,中南米からも。米国人は案外少なかったです。

アジア太平洋地域からの参加者が少ないなど(日本人2人,中国人5人,台湾人1人,インド人1−2名,韓国人・シンガポール人・黒人はゼロ),参加者の人種構成には案外偏りがあるなと感じました。

参加者の背景は,CEO,投資家,EXITした人,その他企業の担当者等(軍人等)が4分の1ずつ?という感じでしょうか。女性が3分の1?くらいでした。

このEPには,過去に2000人を超える卒業生がいるのに,日本人は10人弱しかいません。日本の「情報弱者」ぶりを思い知りました。英語でこのようなプログラムや概念に直接アクセスできないことに原因があるように思います。

(2)スケジュール
6日間で26クラスの講義を受講します。ですから一日4つ強の講義ということになります。朝8時にホテルを出て,夕方遅くまで。1クラスは1時間くらいでしょうか。特に予習は必要ありません。チームで(ロボットを作ったり)作業をするものもいくつかあります。

(3)言語
全部英語で,通訳がありません。1万4千ドルという授業料もさることながら,英語に対する抵抗感が,日本からの参加者が少ない理由と思われます。

■ Day 0 日曜日
0-1 エクスポネンシャル(加速度的)思考
ポケモンGOの話題から始まりました。バーチャル・リアリティ(VR)が世の中を変えつつある,まさにその渦中にあることを知ります。


SUでは,「10億ドル稼ぐのではなく,10億人に影響を与えること」に価値を見出しています。のっけからその気宇壮大さに感心します。

エクスポネンシャルな科学の進歩においては,以下の「6D」の過程を重視しています。

digitized (デジタル化)- deceptive(潜行) - disruptive (破壊)- dematerialized (非物質化)- demonetized (非課金)- democratized (民主化)

この6Dは,このEPの一週間において,至るところで強調されていました。

なお,私が大好きな,ジョージ・バーナード・ショーの以下の有名なフレーズも引用されていました。

The reasonable man adapts himself to the world; the unreasonable one persists in trying to adapt the world to himself. Therefore all progress depends on the unreasonable man.

(合理的な人は自分を世間に合わせようとするが,非合理な人間は,世間を自分に合わせようとする。だから,すべての進歩は,非合理な人間のおかげである)

平凡であってはいけないな,何かを成し遂げるためには,狂ったほどの情熱が必要だな,ということを再認識しました。

Stay foolish, go crazy, do eccentric, and be extraordinary!

0-2 世界を動かすには
世の中の動きが, fashion → commerce →infrastructure →governance →culture →nature の順で進むとの指摘。

私は,個人的には,日本のビジネス文化の「西海岸化」ないし自由化を思考しておりますが,そういうカルチャーの変化は,一朝一夕にはいかないことを再認識しました。

社会を変えるにはいろいろな方法がありますが,クールビズや飲酒運転厳罰化のように,「ガバナンス」から入って文化を変える,という事例が昨今の日本では顕著でしょうか。

0-3 人工知能
iPhoneのSiri機能の発達には目を見張るものがある。犯罪者が死体の捨て場をSiriで訊いた(それが捜査で露見した),なんて笑える話も。

いろんな人間の能力がAI(人工知能)で代替されていく中,クリティカル・シンキング(批判的思考)が重要になってくる,との指摘がありました。これはその通りでしょう。

■ DAY1 月曜日
1-1 デザイナーたれ
VUCA (Volatility, Uncertainty, Complicated, Ambiguity)と表現される,不透明かつ不確実な現代では,リーダーは「デザイナー」であれ,と。

1-2 ネットワーク・コンピュータ・センサー
プラットフォームの限界コストはゼロになる。

1-3 ロボティックス
AIを備えたロボはすごい。なお,鉄腕アトムの時代から,日本のロボットは人間に優しい。アメリカのロボが人間と敵対するようなイメージであることとの対比です。

1-4 イノベーション
SUの共同創立者ピーター・ディアマンディスによる講義。やはりinspiringです。

あなたは「あなたが会う人の平均である」との指摘も嬉しい(you are the average of people you spend the time with)。そう,まさに,自分を高めるために,自分の環境を「自分より優れた人」にするために,こういうプログラムに参加しています。

科学技術の進歩のお陰で,収入・寿命・エネルギーその他のあらゆる点で,世界は,「ゲームが変わる」ほど,すごく進歩している。だから,社会を再デザインする必要があり。

無謀と思える挑戦(MOONSHOT)をせよと。棒ほど願って針ほど叶う,ということですね。

1-5 自動運転車
JUST–ON–TIMEでの輸送が行われれば,駐車場も要らなくなる。土地利用も変わる。自動運転車は,不動産の市場価値を変えます。

イーロン・マスクは,自動車を保有することは,馬を保有することのように時代遅れになるだろう,と喝破しています。

■ DAY2 火曜日
2-1 バイオテック(生命工学)
遺伝子の解明度が高まっている。人間及び脳について,(昔はよく分からず神秘的であったことがいろいろ解明されて,)「すべてが透明化されている(Everything is super transparent)」との印象。

2-2 医療
医療の世界にも,"uberization"(ウーバー化)。つまり,ウーバーのように医師を配置するアイデアなど。

Fitbitのようなウェアラブル機器などで,自己も,健康も,すべてが「quantified」(数値化・計量化)される時代。睡眠の質をスコア化するなどが典型例か。

さらに進んで,赤ん坊のおむつも,IoT化・デジタル化されるなんて時代も?こういう生活のデータがビッグデータ化したら,人類の智慧はさらに加速度的に飛躍し得る。

携帯・ウェアラブル端末の,movable(可動性) → carriable(携帯化)→ wearable(ウェアラブル) →insidable(身体へ組み込む)という流れ。レーシック手術は,ある意味「インサイダブル」の例か。骨折の治療でインサイダブルはもうだいぶ前からありますね。

2-3 マイクロバイオーム(微生物ゲノム)
遺伝子配列を操作することにより人間の性質を変え得る,というちょっと恐ろしいネタなど。

2-4 脳の「書き換え」(Rewiring)
「死」の定義そのものの再構築の必要。 ウィルスで人間を操作する,などの斬新なトピックも。今後何か良からぬことをしたら,悪玉ウィルスやバクテリアのせいにしようかな,と冗談で思ったほど。

■ DAY3 水曜日
3-1 エネルギー
Sci-fi DI (SF小説のような手法でDesign Intelligence,未来を描く手法)。未来の時点から,遡及的に今を描く手法などを学ぶ。

「シリコンバレーではスター・ウォーズが宗教のようなもの」と聞いたことがありますが,その考えですね。地球環境保護のためには,政府の政策もやはり大事,ということなども。

3-2 無限の資源 -太陽光
太陽光1時間分って,人類が1年で使うだけのエネルギーを蔵している! 太陽光開発のコストも激減している。

「石器時代は石がなくなったから終わったのではない」! 同じ段で行けば,石油時代も,石油が枯渇してから終わるのではない。太陽光時代はもう来ている?

3-3 3Dプリンティング
産業用途のみならず,子どもの教育にも有用。将来は宇宙船も3D技術で作っちゃったりして?

3-4 未来の犯罪
職業柄,最も興味深かった講義の一つ。「未来はもうここにある。ただ,不公平に分配されているだけだ(Future is already here - it is just unevenly distributed. )」。これはこのEPを通じて何度か教わった言葉。情報弱者にならないようにしないと。

ドローンが簡単に国境を超えて違法薬物を輸入?これは問題ですね…
室内でマリファナや大麻を栽培すると室温が上がるんですってね(照明器具を用いるから)。知らなかった…
サイバーセキュリティー,最も大事なのは我々の「態度」であると。しっかりコストを掛けて予防しないと。

いろいろ怖い話を訊いたので,講義直後に私はいろいろ暗証番号を変えました…

3-5 AR/VR(拡張現実・バーチャルリアリティー)
holoportation(会いたい人の前に3Dで現れる技術)はもうすぐ実用化されそう。現代のどこでもドア。家族との対話や,遠隔地へのセミナーに使えそう。

3-6 世界の主要問題
講師が「I love challenges. Physically, emotionally, mentally, educationally…」と自己紹介。日本で「挑戦が好きです」って言う人いませんね。私も今後は「挑戦が好き」と自己紹介するようにしよう。

牛肉って, 土地も水も肥料も,メチャメチャ消費するんですね,豚とか鳥とかに比べて! 牛を食べるのを控えようかな…

今後,数十億人がオンライン化する。これは大きなイノベーションを生む。数十億人のビッグデータの威力は驚異的。

「持つ者と持たざる者」haves and have nots の格差は,今後,「持つ者と,メチャクチャ持つ者」 haves and super haves の格差になるとの予言も示唆的。

「今ほど人類の問題を解決する機会がある時はなかったし,その必要がある時代もなかった」。

「実行が全て。アイデアは陳腐」(Execution is everything gold and glory. Ideas are cheap. )。

3-7 SFワークショップ
視点を変えることは,聡明であることに勝る(Shifting your perspective is better than being smart. )。

サッカーではボールを追っかけていてもなんとかなるが,アイスホッケーでは,パックを追っかけていてはダメ。パックの進む方向を予期して進まないと。今のエクスポネンシャルな時代もまさにそう。

未来を予期する最善の方法は,それを創りだすことだ(The best to way to predict the future is to create it. )。

2030年を予想して,そこから遡及的に逆算して,今なすべきことを考える,って手法も斬新でした。

■ DAY4 木曜日
4-1 Exonomics(エグゾノミクス。exponential economicsからの造語。エクスポネンシャル時代の経済学)
最も人気があった講義の一つ。年末に本が出るらしい。楽しみ。

ラリー・ペイジは,週「4日」の勤務で十分になる時代が来ると言っています。歴史的に,人類の勤務時間は短縮しています。

プロダクトやコンテンツやサービスが,プラットフォームになって,エコシステム(産業構造)になるという流れ。なるほど。日本ではまだ「エコシステム」という概念は浸透していませんね…

IQではなく,AQ(Adaptability Quotient,適応性指数)が大事になってくると。時代は,ownership ではなく, accessの時代に。カーシェアリングなど。

Impossibleと諦めるのではなく,I'm possibleと肯定的に捉えては?という問題提起も。

4-2 エクスポネンシャル組織
10年後には,Fortune 500企業の40%がリストから存在しなくなる?

今後生き残る組織には,Massive Transformative Purpose (MTP,野心的な変革目標)が必要だと。私の事務所でも何か大きな目標を掲げようかな…

コダックのような,直線的(linear)な成長しかできないと,終わっている…という英語表現の「linear path to doom」が印象的でした。

4-3 エクスポネンシャル組織の作り方
すべての組織にCEXO(チーフ・エクスポネンシャル・オフィサー)とかCDO(チーフ・ディスラプティブ・オフィサー)を置いたら,なんて半ば冗談も。

Amazon は,従業員の提案に対して Noと言うには,きちんと理由を示さなければならないというポリシーを採用していて,新規アイデアを奨励している。Yes, but...というのではなく,Yes, andと言いなさいと。

4-4 会社変革
ダイバーシティに基づく生産的な摩擦が重要であると。均質な日本社会が世界経済にインパクトを与えたのは昔日。今は(ここシリコンバレーでは),対極的な考えが支配しています。

いや,むしろ,「キャッチアップだけすればよかった高度経済成長期の日本」が異質であったと深く認識すべきでしょう。日本の経済成長は,かつてない高レベル人材が,かつてないレベルで人口増を享受していたことが,最大の理由。

大組織では「変化への敵」をまずは見つけることが大事。変化やLEARNING(学び)が重要だから,組織にCLO(Chief Learning Officer)を置けとの提案も。

4-5 エクスポネンシャル模擬裁判
人工知能やロボット倫理についての模擬裁判。やはりネイティブ弁護士の口頭での議論のレベルは高い。人工知能が法的責任主体になるのか? 死の定義は?など。

4-6 レイ・カーツワイル
言わずと知れた未来学の世界的な権威。遺伝子工学やナノテクノロジーの重要性を強調していた。いずれ,人間の寿命がなくなるのみならず,我々の生物学的ソフトウェア(脳)が矯正される…

4-7 起業・オープンソース
クラウドソーシングの威力。一部のエリートの叡智よりも,大衆の智慧の方が勝ることがほとんど。周知を集める「仕組み」「プラットフォーム」を作った者勝ち,的なところがある。スノーボードやマウンテンバイクも,大衆から生まれた智慧。事務所ロゴをクラウドソーシングで造った私はこれを実感しますね…

■ DAY5 金曜日
最終日ですがまだ完全に時差ボケから回復しません。東へ行くときは時差ボケが激しくなるのはなぜでしょう…。
5-1 宇宙
いろいろ解明されてどんどん実用化・商業化され得る宇宙。人気講義の一つでした。
Ashokaって団体,頑張っていますよね。私も応援するかな…

5-2 まとめ
数十年前,コンピュータは人力作業だった。計算することだけを職業とする人たちがいた。それが今や長足の進歩…

「マーチン・ルーサー・キング は I have a dream と言ったのであって, I have a plan と言ったのではない」というサイモン・シネックの有名なプレゼン。夢を語れ。Whyから始めよ。Specから語るのではなく。

5-3 未来をどうデザインするか
自分の「Why」を見つけなさいと。動機や使命感が大事。自身の動機に点火(Ignite)せよ。NOと言わない会話,ワクワクする体験を設定せよ。

5-4 10億人に影響を
16歳の少年が2週間でジェット機を製作できる時代。バーチャルリアリティ(VR)が,現実を凌駕して「破壊的」なインパクトを? VRの方があらゆる意味で快適だったら,だれが現実世界にとどまるだろうか?

ハイブリッド車は「革命的」であるにとどまるが,電気自動車は「破壊的」。テスラ車の加速は物凄い。
現状のガソリン運転車は,石炭産業のように,いずれ前時代的になるか?

真のリーダーは,「リーダーを育てる人」。

講義最後には,世界を変える「勇気」が強調されていました。みんなが世界を変えたいと思っているが,自ら変わろうとする人はいない。

ガンジーの,You must be the change that you wish to see in the world (世界を変えたいなら,自らがその先鋒となれ) から取った,中山国際法律事務所ロゴの「BE THE CHANGE」への思いを強くしました。うん,進む方向は間違っていないと。

2016年7月26日 ASEANレポート

【コラム】

代表弁護士中山達樹が,ブルネイを除くASEAN9か国を全て踏破し、各国の弁護士と交流を深め、最新の法律事情等を調べてきました。ASEAN全域をカバーする弁護士は、僭越ながら日本では私しかいないと思われますので、簡単に各国情報をまとめてご展開差し上げます。

以下は、詳細な比較ではなく、一人の人間が横断的にASEAN法務を見たときに浮かび上がる特徴を、大まかにまとめただけです。こういういわば「ざっくり」とした比較にも意味があるかも、と思い、玉斧を乞うつもりで公開いたします。

なお、以下の国の順番は、一人あたりGDPの高い順です。

1  シンガポール
(1)概略 
  日本を凌ぐ先進国。4台に1台は高級外車。
  (縦割りになってない)官僚制度など、日本が学ぶこと多いです。シンガポール人材が国外流出しないため、官僚の初任給は1000万円クラス。私が2年暮らした第二の故郷でもあります。
  50年前にマレーシアから追い出され、生存戦略のため外資を導入する途を選びました。それしか選択肢がありませんでした。
  人口約500万人(うちシンガポール人350万人、他は外国人)は島内で飽和状態。日本から進出するのにVISA(エンプロイメントパス)の発給要件が厳しくなったりしています。

(2)人・文化
  中国系8割、後はマレー系とインド系1割ずつくらい。「キアス」(シンガポール方言)と言われる、金にあざといというか「現金」な国民性が一つの特徴。
  日本を大好きな人多いです。もっとも、ASEANの人みんな「超」が付く親日です。シンガポール人は、日本に来る経済的余裕がある人が多いので、親日の人が目立ちます。

(3)法制度
  国としての生存戦略とリンクして、外資誘致のための法制度になっています(例えば、労働法で、解雇自由とか、解雇手当ないとか、最低賃金ないとか)。
  英国植民地なのでコモンロー。電子ファイリングとかスマホでできる裁判期日管理とか、法制度もとてもIT化が進んでいます(日弁連もシンガポールから学んでいます)。
  シンガポール弁護士は優秀なので、シンガポール法務は、日本からいわばリモートコントロールが可能です。
  一方、他の国は、弁護士選択に失敗すれば、足を運んで現地弁護士のお尻を叩いて働いてもらわなければいけないことがあるので、注意が必要です。

2 マレーシア
(1)概略
  やっぱり国のトップ(ナジブ首相)の汚職が痛いです。国として発展に向かっているの?との疑問が提起されています。
  人口約2500万人と少なく、スケールする程度の大きさではありません。
  日本からの退職者が老後を暮らす国としては10年連続一番人気ですが…
  ブミプトラ政策のため、優秀なマレー系以外の人の人材流出が止まりません。
  世界で唯一、「合法的に人種差別」を継続している国です。

(2)人・文化
  政治はマレー系が支配しています。ビジネスは中国系かインド系が力を握っています。
  ビジネスは、中国系かインド系が上に立ち、その下で事務作業をマレー系が行う、という綺麗な分化構造となっています。そしてその下で、単純労働はバングラデシュ等からの移民が担っています。そのため、一概に「マレーシア人」と簡単に括って考えることはできません。これは他の国でも同様ですが。階層構造はマレーシアが一番顕著のような気がします。
  イスラム教はインドネシアより厳格。

(3)法制度
  英国系のコモンロー。制度はしっかりしていますが、その運用は…というところがあります。
  マレー系優遇政策(ブミプトラ)のために、入札事業には、マレー系が暗躍したりする、ちょっとブラックというか特殊な点があります。
  マレーシア弁護士(インド系か中国系)は、シンガポールに次いで優秀な人がいて、英語ができるので、コミュニケーションストレスがありません。

3 タイ
(1)概略
  言わずと知れたASEANの雄。人口が多いので、マレーシアより一人あたりGDPが低くなっています。
  車産業が発達した「アジアのデトロイト」。タイの製造業の半分は日系企業が占めるのでは、という人もいるくらいです。
  タイにいる日本人は(外務省登録は6万人くらいですが)10万人弱と言われています。これは、他のASEAN諸国に比べると圧倒的に多いです(ASEANで2番めに多いシンガポールの3万人の3倍です)。
  タイは、いろいろ住環境が良いので(タイ人の優しさ、ゴルフ等)、タイに「居着いて」しまう日本人が多いです。
  ですから、タイにいる日本人の平均年齢は、他国に比べ、10歳くらい高いような気がします。
  日本の皇室を凌ぐ国民からの尊敬を、タイ国王は得ています。
  90歳くらいの、もう健康状態が危機にあるブミポン現国王にもしものことがあり、王位継承(皇太子に内定しているらしいです)があるまで、今の軍事政権が続く、という情報があります。

(2)人・文化
  微笑みの国。マイペンライ(気にするな)の国。
  でも、「面従腹背」の部分がありますので(あまりNOと言わずなんでもYESと言う)、タイは、国として、キャバクラのようだね、なんて口の悪い人が言っています。
  お金を払う人には優しくする、という意味で。私はそこまで思いませんが、面従腹背の「オリエンタルスマイル」には気をつけないといけません。
  末端労働者まで、敬虔な上座部仏教徒。
  人口構造は、フィリピンの真逆で、出生率は2を切っており、日本やシンガポールのような、「逆ピラミッド」に近づきつつある人口ピラミッドを形成しています。
  そのため、失業率は0.6%と低いです(フィリピンの10分の1以下!)。
  それゆえ、最低賃金を支払っても優秀な人はなかなか雇えません。JOB HOPPINGが、おそらくASEANで一番深刻です。
  タイのトヨタは、優秀なエンジニアを「囲い込む」ために、ボーナスを、10か月分も、支払っています!

(3)法制度
  会社法(民商法)の規定が少なくて(170条くらいしかありません)、近代的な法制度とはいえません。
  誰でも刑事訴追できてしまうなど、ちょっと怖い国です。だから(お金や女性問題等で)変に恨みを買うと、危険です。小切手の不渡りは刑事罰になります。
  サービス業には外資規制があるため、コンサルの力を借りてなんとか外資規制を凌ぐなどの工夫を、多くの日本企業がしていらっしゃいます。
  英語をストレスなくコミュニケーションできるタイ弁護士は、多くないです。

4 インドネシア
(1)概略
  ポスト・タイとして伸びています。ただ、イスラム教であるってことが、日本人からしたら、労務管理の面でちょっとやりにくかったりします。
  人件費は、年々10?20%も伸びていて(ASEAN最大級の伸び)、労務管理が大変です。そのためストも多いです。
  ビジネスの上の方で力を持つ人は、やっぱりチャイニーズ系華僑です。これはASEANどこでもそうですが。
  四輪の自動車96%、二輪車99%が日本製です。おそらく、世界で一番「日本車比率」が高い国ではないでしょうか?
  ジャカルタの渋滞は、ASEAN(OR世界?)最悪だと思います。バンコクよりひどいです。
  バンコクは、電車が通ってますから渋滞回避できます。ジャカルタには、今地下鉄を建設中です。

(2)人・文化
  やっぱり、ムスリムというかマレー系というか、とにかく「家族を大事にする」度合いが、日本人とは桁違いです。
  愛社精神がやはり日本人と比べると希薄なので、労務管理で頭を悩ませるところであります。

(3)法制度
  とにかく、裁判所が汚職であてにならない、というのが最大の特徴といえます。インドネシア裁判だけは何としても避けたいところです。
  土地規制もややこしかったりします。労働法はとてもというか過度に左翼的です(労働者寄りなので、雇う側の日系企業にはよくない)。
  英語をストレスなくコミュニケーションできる弁護士は、タイよりも多くないです。
  
5 フィリピン
(1)概略
  数十年前はASEANの雄でした。だからアジア開発銀行の本部がマニラに置かれました。
  しかしながら、それ以後、財閥が幅を利かせたりして、政治が財閥をコントロールできず、経済も伸びていません。
  日本から距離的に近く、英語も話せて、外資規制も強くなく、人も優しい(たとえば、日本の技術がフィリピン人に盗まれるという話は訊いたことがありません)。
  その点で、投資にはうってつけの国。ただ、製造業は育っていないので、部品等の現地調達が困難というのがほぼ唯一のネックです。
  こんなに投資環境が良いのに、どういうわけか、日本からは人気がありません。
  その理由としては、①三井物産若王子支店長(もう30年以上前か)の誘拐の生々しい記憶、②日本のフィリピンパブでフィリピン女性に恋して、お尻を追っかけて、フィリピンまで行って、それで騙されたりしてお金なくなって日本に帰れなくなった「困窮邦人」がたくさんいること(そのためフィリピンの評判が悪いこと)、の2つが挙げられます。
  マニラの日本人大使館に泣きつく困窮邦人が、年間300ー500人(一日1人以上?!)もいるらしいですが、本当でしょうか…

(2)人・文化
  離婚も避妊もできないと言われる厳格なカトリック。そのため出生率が、ASEANで唯一、3を超えています。そのため、人口ピラミッドが、顕著な、綺麗な「ピラミッド形」。
  そのため若年労働者が多く、失業率が高い(公式には7%ですが、実際はもっと高いという人が多いです)。そのため、(タイと異なり)最低賃金さえ払えば、すぐ人が雇えたりします。

(3)法制度
  役員の国籍要件があるASEAN唯一の国。とはいえ、弁護士事務所等に依頼すればノミニーを出してくれたりしてなんとかなりますので、深刻な規制ではありません。
  競争法は昨年ようやく制定されましたが、執行はこれからです。
  弁護士探すのに苦労しません、みんな英語喋れるから。

6 ベトナム
(1)概略
  共産主義。外資規制(会社の設立事務)も、窓口によって対応が異なったり、苦労します。
  個人的には、ハノイの、「フレンチクオーター」という雑踏が、まさに「アジア的猥雑さ」を象徴しているので、旅行として、是非赴かれることをお勧めいたします。世界中からのバックパッカーが集まっています。アジアの息吹というか、人間のたくましさというか、何かを感じることができます。

(2)人・文化
 これくらいの経済レベルですと、日本のように、核家族ではなく、三世代で住んでいる人が多いです。そのため、勤務管理(異動等)でも、親の意見が重要だったりします。そのため、従業員の親にまで福利厚生を広げると、労務管理がしやすくなったりします。

(3)法制度
 中国に似ています。中国の「董事会」が株主総会と取締役会の2つに綺麗に分かれていないのと同様な会社法の構造です。
「袖の下」費用がかかるため、会社設立に、他国の2倍くらい、お金が掛かります。他のASEANでは、だいたい、50万円で、1か月以内に、子会社を作ることができますが、ベトナム(やラオス)では、半年?1年くらい、そして、100万円くらい、掛かります。
 なお、憲法2条には、「共産党が国家より偉い」ということが書いてあります。中国と同様です。利権集団であるところの共産党の面目躍如といったところでしょうか。
 英語喋れる弁護士は多くないですが、私は幸いにして英語をストレスなく喋れる弁護士を知っています。
 
7 ミャンマー
(1)概略
  5年くらい前に、ようやく「開国」したような国です。昔はASEANの雄だったので、バンコクからヤンゴンに買い出しに行ったりしていたらしいです。
  ヤンゴンの賃料は、シンガポール並みに高騰しています。需要に供給が追いついていません。
  タイ・カンボジア・ラオス・スリランカと同様、小乗(上座部)仏教。
  停電が毎日あるので、自家発電装置ないとやっていられないほどです。ミャンマー一国の発電量(水力発電のみ)は、神戸製鋼1社とか沖縄県1県とかと同レベルしかありません。ですので、雨降らないと電気なくて困る(停電する)という理屈です。

(2)人・文化
  まだまだPRIMITIVE… 建築現場のセメントを弁当に詰めて自宅に持ち帰る人とか居まして(自宅の補強に使うため)、労務管理は大変です。スーツ来たことない人がスーツ作っていたりするので、いわゆる生産性はそれほど高くないと言わざるを得ません。
  「英語が使える」と楽観視しすぎるのは危険です。いわゆる末端労働者には英語が通じません(私は、「タクシー」とか「カレー」とかその程度の英語も通じませんでした…)

(3)法制度
  知的財産につき(100年前の著作権法だけなど)法律がなかったり、労働法の基本法がなかったり、など、まさに発展途上なところがあります。
  汚職防止法もできたばかりでまだ執行段階は…というところです。

8 カンボジア
(1)概略
  内戦やポル・ポト虐殺があったので、年配の人が物理的にたくさん居ません。何百万人も虐殺されたからです。プノンペンの虐殺記念館は一見の価値ありです…
  愚民政策をとったためもあり、識字率が低く、70%強です。他のASEANはみんな識字率90%超えていますが。
  アンコール・ワットは、遺跡のすごさよりも、その「保存状態が悪い」というか、遺跡をみんな足蹴にして歩いている(遺跡の上を普通に歩いている)ことが、私にはショッキングでした。貧しいから、遺跡を保存する経済的余裕がないためです。
  通貨は、USドルが普通に通用します。
  政権はベトナム寄り。若い世代と野党はそれに反発しています。

(2)人・文化
  日本の麺「うどん」は、カンボジアの旧都「ウドン」からネーミングされた、という話がありますが、調べるとこれは都市伝説に過ぎないらしいです…。
  アンコール・ワットに象徴されるように、数百年前は東南アジアで最大の栄華を誇っていました(クメール王朝)。今のカンボジアとの差を考えると、栄枯盛衰を思わせられます。
  これ、というカンボジア料理はありません。やはり食文化と経済力は比例する、その例に漏れないといえます。  

(3)法制度
  外資に来てもらいたいこともあり、かなり、というか最も?外資規制の緩い国です。
  一方、識字率低いので労務管理が大変という面があります。
  不動産と株の売買には、不文律で、株主総会の全員一致の賛成が必要と聞きました… 

9 ラオス
(1)概略
  ASEAN唯一の内陸国。人口700万人強しか居ません。
  国のシステムは、いろんな意味で「ミニ・ベトナム」です。USドルやタイバーツが通用します。
  政権も、みんなベトナムの顔をうかがっている、という感じ。
  ASEANで最も新しい国でしょう、1975年に建国され、まだ41年しか経っていません。その間ずっと共産党独裁政権です。
  「41年も全く変化しない」国の閉塞感/停滞感は、肌で感じるとすごいものがあります。
  民主政で自由度が利く日本に生まれた幸せを思います。

(2)人・文化
  文物が少ない! 国随一のショッピングセンターが、非常に貧弱で、例えば「渋谷109の10分の1くらいの商品量」くらいの印象でした。
  国一番の観光スポットに、私一人しか居なかった!みたいな経験もしました。
  首都ビエンチャンの人口も70万人程度。日本の地方都市より小さいみたいなイメージです。

(3)法制度
  要するにベトナムそっくり。会社設立はまさにベトナム同様、他のASEANスタンダードの「50万円+1か月」ではなく、「100万円+半年(か1年)」コースを覚悟しなければなりません。


以上、ブルネイを除くASEAN9か国です。以下は、その他のアジアについてです。

10 インド
(1)概略
  世界最大の民主主義国(1991年までは社会主義国でした)です。ただ、悪く言えば、Too much democracyで、住民が収用に反対して(昔の成田空港みたいに)、インフラ整備が進まなかったりすることがあります。その点で(国権が強い)中国と正反対なところがあります。
  英語は、末端労働者がしゃべる方言は、特に聞き取りづらいです。Marketは「マルキ」、Armyが「アルミ」になったりします…
  日本人はインド全土に1万人弱しかいません。シンガポールの3分の1くらい。案外少ないです。
  やはり、食事(カレーばかり。新鮮な野菜とかない)が日本人に合わない、というところが大きいような気がします。

(2)人・文化
  とにかくインド人はよくしゃべるので、しゃべり負けないために、関西系の人を送る企業が多かったりします。
  人口が多いので一人あたりGDPはベトナム以下になってしまいますが、日本人が相手にする、<都市に住んでいて、ワイシャツを着ていて、靴を履いている>インド人のレベルは、結構高いです。

(3)法制度
  旧英植民地なのでコモンローです。ブルーカラーワーカーは、「いったん雇うと永久に解雇できない」と言われるほど、手厚く保護されています。
  経済規模が大きいので、競争法の罰金は高くなります。他の国だと罰金は数億円レベルなのに、この国だと、数百億円レベルになります(カルテルの罰則は、国内売上10%がグローバルスタンダードであり、インドもこれに近いです)。

11 バングラデシュ
(1)概略
  世界最貧国、と言われるだけあり、首都ダッカのインフラは残念な感じでした。下水工事をして、街中が下水の匂いとか…
  公共交通機関がない、流しのタクシーもない、というのは他国と大きな違いです。渋滞も、世界最悪と思われるジャカルタのさらに上を行くひどさか、という感じでした。

(2)人・文化
  きちんと時間通りに待ち合わせできるか、という点からしても、まだまだ国のレベルが低いなと思わせることがあります。

(3)法制度
  顕著な特徴はあまり思い浮かびませんが、こういう国では、制度そのものと運用はだいぶ異なります。

12 スリランカ
(1)概略
  人口2000万人強と市場は小さいです。ただ、インド洋の要衝に位置しており、地政学的にはいいところです。日本から直行便で9時間掛かり、やや他の国よりは遠いです。
  5年前くらいに内戦が終了して、今は、知られざる「投資の楽園」状態です。先駆者利益を確保したいところではあります。
  コロンボの開発の勢いはすごいです。かつてのヤンゴンのよう?
  単位面積あたり世界遺産の数が、世界第2位、というのが国の自慢の一つです。

(2)人・文化
  小乗仏教で、親日的。インド系的な風貌をしているのに仏教国、というのはやや違和感がありますが。
  アチェの地震と東日本大震災で、国同士がお互いに支援し合った、というところから、親日的です。
  また、日本占領後にサンフランシスコ条約で独立した1952年に、スリランカのジャヤワルダナ大統領(当時は外相)が、日本の独立を支援するスピーチをしたことも、スリランカと日本の友好を象徴的に示すエピソードです。
  
(3)法制度
  旧英植民地なのでコモンローです。
  競争法は存在すらしません。国として、国際競争力を維持するために、独占を認めているということです。

以上

2016年7月11日 シェムリアップ・レポート

【コラム】

代表弁護士 中山達樹が,7月4日から5日にかけて滞在した,カンボジアの首都プノンペンからちょっと離れたシェムリアップ情報をお届けします。

世界遺産アンコールワットがある街です。

▪ 概要
シェムリアップ(SIEM REAP)は,プノンペンから飛行機で1時間。 30万人都市。月給平均約80ドル。
昼飯の材料としてのRed antsを探している人がいる。ほとんど生で食うこともあるらしい
戦争・地雷で足を失った傷痍軍人を見かける。日本でも昭和50年代初めまではいましたね。50ドルとか一日に貰う人もいるらしい

▪ 交通
車メチャスロー!時間がゆっくり流れている
信号もほとんどない
ホーン(クラクション)も鳴らさない
雨でも傘差さずバイクに乗っている人が多い
それくらい雨が日常茶飯事だからなのか?

▪アンコールワット等のアンコール遺跡群
(1)概要
ヒンズー寺院として建てられたけど,のち仏教寺院に。ヒンズーと仏教って密接に絡み合っている
アンコール遺跡群(他にアンコール・トムとか)全体は世界最大の宗教複合施設
アンコールワットはカンボジアの国旗(1993年に変わったんだね)にもなっている
4000 人以上がこの遺跡群内に住んでいる

(2)建設
14年掛かって12世紀に建設された。10万人が働いた。800 X 1125メートル
アンコールワット建設当時(日本では鎌倉幕府誕生前,平清盛とかその前あたりの時代),カンボジア(当時はクメール王国)は,「東南アジア最大」の国だった。今のミャンマー,タイ,ベトナム,マレーシアあたりまで版図を広げていた

(3)カンボジアの歴史
1863-1953はフランスの植民地。
うち数年は日本の植民地。
フランスは何もしなかった…橋やフレンチクォーターを築いた程度。
フランス人はいろいろ遺跡を盗んで,パリに1000点以上持ち帰った
日本人の森本さんって僧が 1632年に来た
1975 - 1989 カンボジア・ベトナム戦争
100万人以上の死傷者 新ベトナム政権がポル・ポトのクメール・ルージュと闘う

(4)観光
アンコールワットに,一年に500万人程度。2020年には800万人を目指している。
うち6−7割はアジア人。多いのは,ベトナム,中国,韓国。
カンボジアに来る人の8割はアンコールワットにまで来る。

(5)保存
インド,ドイツ,イタリア,日本,中国その他が支援して遺跡を保存。SPUNG(スポーン)という木が遺跡を覆うのが問題。今はUNESCO頼り
 
アンコールワット以外はジャングルに覆われていた(overgrown by trees)けれども,アンコールワットのみは木に覆われていなかった
 
今でも未発掘は多い。歩いていると,足元に,数百年前の,建物の天井のかけら(煉瓦様のもの)が落ちていたりする。日本ではありえない…

(6)大乗仏教と小乗(上座部)仏教
-大乗仏教(Mahayana / Greater Vehicle Buddhism)
①釈迦ではなく僧の言うことを信じる
②涅槃(Nirvana)の下にある天国(Heaven)を信じる
③輪廻転生(Reincarnation, cycle of life)を信じる
-小乗仏教(Theravada / Smaller Vehicle Buddhism)
①釈迦の教えに忠実
②天国の上にある涅槃を信じる。そこに悟りを開いて到達しようとする(Achievement of enlightenment)。涅槃はOut of the cycle of life
③輪廻ない
 かつてはカンボジア/クメールも大乗仏教だった。でも,王が,業carma の考えをなくすため,小乗仏教に変えた(とすると,カルマってのは大乗仏教特有の概念なのか?)

(7)特徴
Spung(ガジュマル?とは違うようですが) という木に囲まれた遺跡。映画『トゥームレイダー』に出てきたタ・プロームが典型
遺跡が木を支えているのか,木が遺跡を支えているのか。屋根から木が根付く
数百年単位の歴史観人生観を養うのにいい場所でした。一期は夢よ,ただ狂え,ですね
なお,本稿はガイドからの又聞きをそのまま記載したりしています。

2016年7月11日 プノンペン・レポート

【コラム】

代表弁護士 中山達樹は7月6日に,IPBA(環太平洋法曹協会)の友人弁護士との会合等のため,プノンペンに来ています。
取り急ぎ,ウラを取っていない,現地の人から聞いたり私が感じたりした,生々しいローカル情報をお届けします。

▪️ 英語名称
Phnom Penn って,訪れたりしないと,書けるようになかなかなりませんよね。フィリピン Philippinesも,実は結構難しいスペルです。

▪️ 総論
街中スローモーション! 走る車,バイクがみな40キロ以下!
これは今までのどこの国でもなかった。
取り締まり厳しくて法定速度を守っているというわけでもないよう。人々がゆったりしているってことでしょうか

▪️ 気候
5-10月の6ヶ月,一年の半分が雨季。そのうち最初の3ヶ月が雨多いとか
一番暑いのは4月。今年は記録的な42度! 温暖化はここにも
ちなみに,タイと同様,4月が正月です。でもタイのように水掛けたりはしないそうです

▪️ 人
都市部の70%くらいの人は英語をしゃべる
トゥクトゥク(カンボジアではRemork. 木製の肘掛けというか横枠が特徴。バイクが荷台を引っ張っている。荷台が重いから(フィリピンのトライシクルより重い)坂道は速度遅い…)ドライバーから弁護士まで,みんな親日で(半分お世辞だろうが)「日本が一番」だという
身長は,日本人よりやや低いか。180センチある男性は見かけない
ただ,フィリピンの田舎やペルーで感じたような,「身長低い!」と驚きを覚えるほどではない

▪️ 通貨
USドルしか用意する必要はないです,数日の滞在なら
私も現地通貨は一切用意しませんでした

▪️ ホテル
一万円ちょっとでいいホテル泊まれる。もちろんWi-Fiつながる
ベトナムよりWi-Fiつながる印象

▪️ 通信
日本語とは時差2時間。
空港でもログインすれば無料Wi-Fi使える
もうどこの空港でもデファクトですね,すぐWi-Fiが使えるのは

▪️ 料理
2日限りの滞在だったからか,特段のローカルフードには遭遇せず… ASEANにある他国の料理(シンガポールチキンライスとかナシゴレンとか)が「ローカルフードだ」と店員が言う…

▪️ 物価
プノンペンの人々の平均月収は150ドルくらい
日本人が住むようなコンドでも,100 平米で600-1000ドル
67平米で200ドルってところに住んでいる人もいる
ベトナムやヤンゴンのようにインフレ化してない! 安い!
私の友人弁護士の時間制報酬:USD250ー300くらい
国際弁護士としてはreasonable

▪️ 言葉
「スースダイ」= ハロー
「チヨムリツプスー」= how do you do
「アーコン」=サンキュー

▪️ 交通
8ー9割が日本車。右側通行,左ハンドル
レクサスが多く最高級車。メルセデスあるって聞いていたけどほとんどない。ポルシェがあった
ボロイ車がなかった。中古車輸入規制があるのか?
空港からのタクシーでも,メーターない
「いくら?」と聞いても答えない。英語が通じないよう
メチャ不安になるけど,まあこの国の物価水準なら,多少ボラれても大したことないかなとタカを括る(ある場所に寄ってからホテルに行くこともあり,事前に交渉はしなかった。英語通じないので面倒くさいというのもあった。最終的に筆談で交渉した)
歩道にあたるところが舗装されてない,ダッカよりもどこよりも!
歩道部分で下水工事しているところ多し
だから車が通るのは狭い一車線の幅しかないところが多い
だから臭いがキツいところもある
でもダッカの一部ほどの臭いではなかった。人口密度のせいだろうか
渋滞は,今後はひどくなりそう
経済成長(都市部への人口流入。現在のプノンペンの人口200万人)に,下水工事が追いつかない印象
バイク多い。ベトナムほどではない
バイクは,ノーヘルの人多い。3ー4割くらいか。今まで見た世界中の都市で一番ノーヘル率高いかも?
基本的に移動はタクシーかトゥクトゥクかバイクタクシーか
公共交通機関(地下鉄,バス)たぶんなし
18歳から運転できるけど,明らかに中学生と思われるスクールボーイが,バイクを(おそらく無免許)運転している。聞けば「まああんまり取り締まらないし」って本当か?
あ,警察も,ノーヘルでバイク乗ってました。そんな国あるんだ…
ベトナムで見なかった自転車が多少走ってる。経済レベル低いからバイク買う余裕ない人かな…

▪️ 政治
カンボジア,ラオス,ベトナムの3カ国を「Indo China」(インドチャイナ,日本語ではインドシナだね)と呼んでいる
この3国は,ベトナム(大乗仏教,カンボジアは小乗だけど)の影響がとても強い!
ラオスに至っては,ベトナム人が帰化して高官になっているとか
タイとは,同じ小乗仏教のくせに,国境紛争あること(や歴史的敵対関係?)もあり,仲良くない
タイ人は,カンボジア人を下に見て軽蔑するようなところがある
現在の与党は30年くらい?もっと?政権握ってる
司法制度(賄賂やスキャンダルを理由とした訴訟とか)を使って,野党を攻撃している
来年の2017年に commune(地方?)選挙があり,再来年の2018年には総選挙がある
前回の2013年の選挙では,それまで80%くらいの議席を持っていた与党が,22席落として,90→68議席に減らした。野党が55席
だから2018選挙では与野党逆転か?
若い世代は,与党寄り。野党がベトナムべったりなのを批判的に見ている
年寄り世代は,内戦(1967ー75)およびその後のベトナムとの戦争(1989)までのクメール・ルージュ(ポル・ポト)の虐殺が悪夢ないし「トラウマ」となっている
現首相も,あろうことか,毎日のように,「(政府の意見に反対すると)内戦になるぞ」と国民を脅している
上の世代は戦争のトラウマからその脅しに怯えているものの,戦争を知らない若い世代にはあまりその脅しが効いていない

▪️ 教育
ASEANが自由化するから,国際化しないと競争力を失うという危機感がある。ライバルが海外からカンボジア国内に入ってくる!
だから余裕のある家庭は,子供の教育にお金をかける
公立小学校のレベルは低いから,余裕ある世帯は,私立学校に行かせる
私立学校はインターナショナルスクールのようなもの
私立学校の学費は,年間で5000ドルも…
アメリカでも2000とか3000ドルなのに…
教育では読書を奨励しない。これはポルポトの影響とかではなく,伝統的に,教育熱心ではないということ

▪️ カンボジア進出法務
最大の問題はワイロかな…とローカル弁護士もいう
(1)汚職
Tea Moneyという言葉を使うのかと聞いたら,Under the Table / Service Money / Facilitation Paymentの方が使うかもだって
(2)ガバナンス
株主総会特別決議は,他のASEANとは異なり,日本のように,3分の2
ビックリしたのは,不文律で,「不動産と株の売買には,株主全員の同意が要求される」ってこと! こんなの世界中にないよ!
理論的には,1%株主でも,会社の不動産と株の売買に,拒否権を握るってこと。。恐ろしい…
(3)労務
外国人1人あたり,ローカルカンボジア人を10人雇わなきゃいけないって建前になっているけど,カンボジア人2人とかでも,許してもらえる。法と実務の乖離の例
(4) 競争法
なし。スリランカ同様ですね
WTOに加盟した2003年から,競争法を制定しなきゃいけないことになっているので, ドラフト中。もう13年も経っているけどね…
(5)その他日本の影響
2007年に制定されて,2011年末に施行された民法は,日本の民法を大きく参考にしている
日本からJICA経由でカンボジア法務省で法整備支援で今も働いている島貫マサオ弁護士の助力などによる
(6)進出コスト
ASEANはどこでも,会社設立に50万円くらいみとけばいいです。ベトナムはその倍くらいかかりますが
で,カンボジアは?と聞いたら(アメリカ系の法律事務所では50万円くらいの見積もりをもらった記憶あり),私の友人弁護士は,3500ドル,しかも,No hidden costで,かつ,1週間で会社作れるよ,だそうです,他の法律事務所では1ヶ月くらいかかるところを

▪️ 観光
是非見るべきは,Genocide killing field (ポルポト虐殺の地。シャレコウベが山積み!)と,S21 prison(クメールルージュが虐待した刑務所)。正直これさえ見れば,あとは見なくてもいい
他に, 国立博物館National Museum,王宮Royal palace,Wat Nomっていう街の中心的なパゴダに行きましたが,まあタイとかミャンマーとかのものの方がインパクトはあります

▪️ その他
5階以上の建物少ない。ヤンゴンもそうだったな,4年くらい前
GUN SHOOTINGができる(50-60ドル)くらいってのが観光産業になっている。ガンフリーの国なのかな
200年前からある建物で,マフィアの巣窟になっているって場所にも行きました
総じてバングラデシュよりは過ごしやすい?でも人口規模は桁違い

2016年7月11日 ラオス・レポート

【コラム】

代表弁護士中山達樹が,カンボジアに続き,ラオスにも,IPBA(環太平洋法曹協会)の弁護士と打ち合わせをするため,7月7日に行ってきました。
ウラを取っていない生情報を取り急ぎお届けします。

■ 国の概要
ラオス(Laos)−人口700万人。面積日本の63%。 ASEAN唯一の内陸国。1975年建国って私より1歳若い。ベトナムの影響大きい社会主義国です。「ミニミニベトナム」というのが印象。
英語では「ラオ」と発音するのかと思ったら正式には「ラオス」でよさそうだ。でもこっちの人は多く「ラオ」と発音する? フランス訛りか(旧仏植民地),語尾をしっかり発音しない東南アジア的な特徴のゆえか。
首都ビエンチャン(VTE),人口70万人。小さいよ。日本の地方都市だ。実際歩いてみても,うん,私がほとんど足を運ぶことのない小さな町という感じ…

■ 空港
空港に,エスカレーターない! 到着時にも,出発時にも!荷物重い人はエレベータです。階段かエレベーターのみって初めてかもこんな国。ブルキナファソあたりはどうだったかな…
到着後ホテルまでどうやって行こうと車寄せに出たら,ダッカばりに貧弱。車10台停まったら満杯。タクシー運転手も,私を待たせて,歩いて車を取りに行った。日本のゴルフ場をチコっと大きくしたようなイメージ
交通手段は,エアポートタクシーしかない。メータータクシーない。もちろん電車バスなどの他の交通機関はない
帰りの空港,ホテルにいつ着けばいい?と訊いたら,「1時間前に着けば十分」と。国際線でも。国際線で,フライト1時間前に着けばOKって国は今までなかった(シンガポール以外)。それくらい,利用者が少ないってことだ。

■ タクシー
ビエンチャンの中心部まで7米ドルの固定費で前払い。中心部行くにはみんな7ドル。まあ日本での初乗りだからこれは文句ない。
ちなみに帰りは,Tuktuk(現地語Chambo)で6ドル払ったら運転手がエラい渋った。とするとこの7ドルってのは高くない金額か。10分だから4kmくらい。
タクシー運転手英語使えるな,と思って政治のこと話したら全く通じない…。タクシー乗務に必要な会話しかできないのね。
タクシー運転手が,ホテルまで10分で着くと言って,本当かなと思ったら,本当に10分で着いた

■ 車・バイク
日本車6-7割か。他に韓国車やよくわからない車など。カンボジアほど高級車は多くない。やはりみんなSUVというかランクルみたいなデカイ車のみ。道がBUMPYだからね。
傘差してバイクに乗ってる人がいる!これも世界で初めて見た。自転車に傘ではないですよ。しかも夜に。危ないよ…

■ 通貨
現地通貨はキップ。だけどATMで降ろさなかった。USDのみ持参でなんとかなる。
あと,知らなかったけどバーツ使えるので,持ってくるといいです。どこのレストランでも,キップとUSDとタイバーツ表記した請求書を持ってきます。
ドルの通用性については,カンボジアのようにいきなりドルで会話しない,まずはキップで金額を提示される。

■ 政治
共産党一党独裁が建国後40年も。だから社会も何も「変化しない」。ダイナミズムがない。活気がない。これは半日この国を歩けば肌で感じる。いや,感じるどころか,グサグサ刺さってくる。
社会のあり方,国のあり方,人のあり方,について,この国の停滞(退廃?)した/澱んだ空気感・閉塞感が,問題提起をしてくる。問いを投げかけてくる。
東京都知事選とか,参院選とか,候補者いないとか,いろいろ言っているけど,民主政っていいなと。選択肢があるのはいいなと。
総選挙は5年に1回だそうです。日本は選挙多すぎとか言うけれど,5年に1回しかない,ってのもどうかな…
街のいろんなところに,国旗と並んで,共産党の党旗が立っています。そう,こういう社会主義国では,国家より党の方が偉いんだよね。中国やベトナムの憲法2条には揃って書いている,「党が国家より上」って。おそらくラオス憲法にもそう書いてあるだろう。
基本的にベトナムが右向けば右向く的な印象でした。まあ1日でどこまで分かるか?とも思いますが。

■ 規模感・停滞感
国一番の観光スポット(大きい仏塔)に,観光客が私だけ?という不思議な光景。日本だと,浅草とか金閣寺に一人ってあり得ないよね。
国最大のショッピングモール(いや,ショッピング・センターと呼ぶのがふさわしい),実質一階20店舗くらいしかない!3階あるけど,2階は貴金属のみ,地下1階はバッグと靴のみ。しかもエレベーター動いてない! 
この文物の少なさ(が,ラオスに来た一番の収穫であったかもしれない。こんな国は私がいままで訪問した国でも指折り。ブルキナファソ以来か)。社会主義国だから? 人も閑散としており,店員がソファで寝ていたりする。北朝鮮ってこんな国なのかな…と想像したりします。
スタバもマックもない。たしかカンボジアにもなかった
総じて,<情報も文物も移動も実質的に制限されている>。でも夕方には多くの人がメコン川をただ眺めていて… まことにのどかな光景。いや,情報も文物も移動も実質的に制限されていると,「のどか」にならざるを得ないのか? 
私がこの社会に生を享けたらどんな人生を歩んでいたのだろうと想像すると,格差とかいろいろ問題になっているけど,なんにでも挑戦できる日本って本当に素晴らしいなと。
雄大なメコン川は,うん,人生を洗ってくれるというか,孔子の「逝く者はかくの如きか」を思い出させるような,いい味を出していました。

▪️ ビジネスチャンス
こう書くと,ああラオスはビジネスにならないのねと悲観的になる人が多いのかもしれない。
でも,靴を履いてないアフリカの人に靴を売る話にあるように,こういう国だからこそ,チャンスがあると考えることもできるのかもしれない。

■ ラオス進出法務
(1) 外資規制
業種に応じて,資本金割合など?の規制あり。ベトナム同様。小売業は400万ドル以上?
代表取締役は基本的にラオスにいなければいけない
当局は,MPI(Ministry of Plan and Investment,計画投資省)とMIC(Ministry of Industry and Commerce産業商務省)。
前者は,鉱業,不動産,保険などの許認可(Concession)ビジネス。後者は,普通のサービス業とか観光業とか。
(2) ガバナンス
株主が1人の会社と,2人〜30人の会社(LLC Limited Liability Company)の,2つに大別できる。日系会社がラオスに来るならJV組まないと難しいだろうから大概は後者か
役員は,前者ではマネージャーがいるだけ。後者LLCでは,取締役会が意思決定機関
(3)労務
外国人一人に対してラオス人何人…というタイのような規制はない。ただ,外国人よりラオス人の従業員の方が多くないといけない
解雇手当は,世界標準。3年勤務までだと,総給料の10%,3年以上だと,15−20%くらい
最低賃金はある。でも,ベトナムインドネシアのように,そんなに上がっていない。
(4)競争法
2015年ころ,競争法(trade competition law)が出来た。もちろん執行はまだまだ
(5)設立コスト
ベトナムそっくり。(弁護士・コンサル費用)100万円+半年ってレンジが基本。ファシリテーションペイメント(賄賂のようなもの)を含めると,150万円+1年を覚悟しなければならない時も。
ラオス当事者に,定款の他に合弁契約必要だよ的な教育をすることも弁護士の仕事になったりする…
(6)弁護士
国全体に弁護士200人くらい。うち7割は,70歳以上の老人。司法試験とか通ってない。国際業務ができる弁護士は10人くらい。

■ ラオス語
タイ語に似ているところがある
Sabaidee / hello
Khop chai lai lai / Thank you very much
Sok bee / good luck

■ その他社会
若者が海外に留学する場合,どこに行くの?と訊いたら,「奨学金がもらえるところ」と。アメリカでも中国でもロシアでもベトナムでもシンガポールでも,特によく行くところがあるわけではなく… 豪州とか結構あるらしい
4月に旧正月があるのはタイやカンボジアと同じ。タイ同様(カンボジアと異なり)水かける
サービスの質は残念な店もあった。中学生みたいな店員・アルバイト?がビール持ってきて栓抜きを5分も持ってこないとか… ただ,泊まったホテルのサービスはよかった
巷に,結構漢字表記が多い。看板の2割くらいか?

2016年7月5日 ベトナム・レポート

【コラム】

代表弁護士中山達樹が,5月末にベトナムのホーチミン(HCM)・ハノイに行って参りました。簡単にアジアの熱気をお届けします。

■ 気候等
・HCMはシンガポールより暑い 37度まで上がることも
・街に英語表記少なし
・街並み案外マシ バンコク並み 道路は案外よく舗装されてる
・渋滞:土曜は普通
・WiFi通じるけど電波弱い

■ 交通
・右側通行
・バイク多し(単位面積あたりのバイク数,HCMは世界一か?) 多くはホンダ
・ホンダがバイクの一般名詞になっている,ホチキスのように(「ヤマハのホンダを買った」という会話がある)
・日本車はトヨタ多し 韓国車も多少
・バイクが歩道を走ったりするので気をつけられたし…
・クラクション少し でもやはりある ジャカルタより多いか
・タクシー HYUNDAIのマニュアル車…
・通勤7キロ渋滞で2時間かかることも
・アイフオンもって歩いていると、後ろからバイクでひったくりされるので注意せよ
・女性もバイクを運転する 後部座席に乗るときも、BKKのように、横坐りしない。股がる。
・だからベトナム女性はガニ股多しという説あり
・交通違反 信号無視しまくり
・信号は少ないがある でもみんな守らない だから信号ある方が危ない
・タクシー英語通じない
・タクシー領収書 経費にならない RED INVOICE の問題
・乗ったタクシーも その時間は通行禁止のところを通っちゃって、警察に捕まって、私の面前で賄賂でごまかしてた… 聞けば20万ドンは1000円が相場
・ハノイの観光地から乗ったタクシーのメーターは,「観光客仕様」で,通常の3倍位の値上がり率。メータータクシーだからといって安心できない

■ 物価
・HCM中心部のオフィス賃料は、溜池山王より高い。理由:供給が少ないから。ヤンゴンと同じ
・日本人駐在員の住居(コンド)の賃料:5年前のシンガポール駐在員(私)レベル
・最低賃金 2万円くらい? 案外高い。っていうか、年率10%以上,上がっている
・ハノイビール 50円 安!
・HCMにゴルフ場は15個くらいか 多くない タウンから 1時間くらい
・ゴルフのFEEはまあインターナショナルレベルの1万円以上

■ 言語
・「ありがとう」はカモンないしカノン、漢字の「感恩」
・ことほどさように、ベトナム語は中国語由来が多し

■ 歴史
・ベトナム戦争 1975年終結、その際のボートピープルが、一族郎等の金を集めてアメリカなどに
・その子孫等が「越僑」(ヴィエッキュウ)、今は彼等「越僑」からの海外送金が,ベトナムGDPの1割を占める

■ 経済
・HCMの利益は北ハノイに吸い上げられる構成
・北は南を虐げようとして,意地悪して,南HCMでの出店開業に許可出さないことあり
・スタバやマック2年くらい前から進出。スタバはHCM至る所にあるという印象。10店舗くらいらしい
・ベトナムコーヒー豆、美味くないけど実は算出高世界1位とか2位。ブラジルと争っている
・日本の缶コーヒーの多くはベトナム豆!
・経済レベル低い、だから共働きじゃないと食っていけない
・日本のように核家族ではない。三世帯同居で、爺さん婆さんの子育て援助を受けて暮らしている
・だから、従業員の異動配置転換においても、親の意見が重要。儒教主義とかファザコンマザコンだけでは片付けられない
・だから、福利厚生で、従業員のみならず、親にまで福利厚生を拡大すると喜ばれる
・これがジョブホッピングを避ける1つの秘訣

■ 文化
・ベトナム人は、ハノイと比べると南(HCM)の方が人懐っこい
・ベトナムにいるコリアン:日本人の10倍
・「嫁買い」:韓国人が従順なベトナム人をお嫁さんにしようと来越
・でも本国韓国に連れ帰って、ベトナム人妻を虐待すること多し
・だからベトナム政府は、韓国人男性と、ベトナム女性の結婚について、何歳離れると許可制、とかにしている
・ラオスにもそんな韓国人の「嫁買い」問題が発生しているらしい
・清水建設等がJVでHCM初の地下鉄掘ってる
・そんな感じで日本企業が開発援助しているので、みんなとても親日的

2016年6月13日 シンガポール・レポート

【コラム】

代表弁護士中山達樹が,シンガポールで1週間参加してきた,リークアンユー公共政策大学院のアジア地政学プログラムのまとめを,簡単に紹介します。
とりあえずは,最もインパクトに残った総論のみ。各論は、おってご紹介できればと思います。


⑴ 日本人には危機感がない!

…やっぱり溜池山王で座っているだけでは情報不足,刺激不足。
 人材と情報の集まるアジア・シンガポールにたまには来ないと,今の我々に一番大事な「危機感」を肌で感じることはできない。。

⑵ テクノロジーの重要性

…テクノロジーはこれからどんどん大事になってくる,地政学をも凌駕する?
 例えば,当局へのファイリングが,オンラインになれば,賄賂を支払う機会もなくなる。ITが地球を救うのです。


⑶ ゼロサムではなくwinwin

…日本や大国は,プライドから?どうしても「ゼロサム」でモノを考えがち。
 でも,シンガポールのような小国は,生き残るために,「win-win」で考える癖が付いている。
 これは,大企業とベンチャーにも当てはまり得る。ゼロサムで考えがちな大企業と,win-winを考えるベンチャー。


⑷ やっぱり製造業と輸出は大事だよねっていう東アジアモデル

…日本・韓国・台湾が成長した原因,それは東アジアモデル。
 ちゃんと国内生産して輸出して。それで国際競争力を培って、というモデルです。
 イノベーションも,そういう素地,すなわち,「国際的に輸出を出来るだけのプロダクトを製造をする力」がないと,起こり得ない。サービス産業とかだけでは,不十分だということ。


⑸ 根拠なき自信がイノベーションを生む

…学力テストをすれば,成績がいいのはシンガポールとか日本だったりするけど,主観的に,「テストの点数が良かったと思うか」では、日本とかシンガポールはむしろ下位。
 一方,テストの成績はさほど良くないけど,主観的に「俺、良い点数とったと思うよ」と考える人が多いのが,アメリカ,イスラエル,スウェーデン。
 この三カ国に共通するのは,イノベーション大国。
 このデータから言えるのは,「根拠のない自信」がイノベーションを生む,ということ。
 起業なんて,知識よりは「信念」。過剰な知識はイノベーションを阻害する?


⑹ 麻生大臣もシンギュラリタリアン!

…シンギュラリタリアン,って言葉をここで初めて知った。Singularityを深く信じる人。もっと端的に言えば,「自分は死なない」と思っている人,です。
 人工知能とかの発達で,人間の寿命もなくなる,つまり,自分の死は自分でコントロールできるようになる,と思われています。シンギュラリタリアンはそう信じています。
 麻生大臣もシンギュラリタリアンとは… 漫画やSF好きな人は,シンギュラリタリアンになりやすいのかも。
 たしかシリコンバレーでも,『スター・ウォーズ』が,それこそ聖書のような扱いをされているとか。


⑺ 国民国家はフィクション

…(私のみならず多くの人が)良くも悪くも,どうしても,「日本」という国から意識が離れられない。私が5年前,シンガポールで「シンガポール残らないか」と誘われたけど,その誘いを蹴って日本に帰国したのも,日本や所属する組織に恩義を感じて… という義理から。
 しかし,そもそも,「日本」なんて、この200年くらいの,「国民国家」ができてからの,人為的な,いわばフィクション。
 もっと長いスパンで,人類の歴史を振り返れば,数十万年?人類には,「国家」なんてなかった。そもそも人類はグローバルであった。
 そうであるなら,今ここで「日本」という縛りに拘泥する必要がどこまであるか?


 もちろん,日本人の良さ,などは,捨てるわけではない。誇りに思っていい。
 しかし,沈みゆく巨艦と,運命をともにするのか?という問題提起。日本という国の運命と,自分の人生を,同一視する必要がどこにあるのか?

 日本と心中するのか?という問題提起。いや,日本を見捨てる,とか言っているのではなくて,「自分の人生で何ができるか」「与えられた環境と能力を最大限(世のため人のために)活かすためには,いま日本で日本という国のためにもがく/闘う/働くことが、最善なのか?」「自分は日本に留まるとしても,それを子どもたちの世代に強制・推奨することはどうなのか?」という問いかけは,常にできるようになりたい。


以上のように,日常の日本での生活では味わうことのできない,think out of the box (既存の枠に囚われずに、破天荒な考え方をする)ができる,極めていい経験になりました!

2016年6月13日 シンガポール リークアンユー公共政策大学院 エグゼクティブ・プログラム修了

【コラム】

アジア地政学や次世代のテクノロジー等を中心に,政治、経済、社会,文化、宗教、歴史、技術、教育、汚職、海事等を学ぶ,エグゼクティブ・プログラム(Insights into Regional Politics, Economics and Culture for Japanese Business Leaders and Policy Makers)を修了しました。

私の母校・シンガポール国立大学で行われたこのプログラムには,各界の一人者が揃っており,日本の人材のシンガポールへの進出を肌で感じました。

ここで得たことはそれこそ枚挙に暇がありませんが,適宜,皆様に還元していきたいと思っております。

2016年4月19日 クアラルンプル・レポート

【コラム】

代表弁護士 中山達樹が,マレーシアのクアラルンプルで行われた,第26回IPBA(環太平洋法曹協会)の年次総会に出席して参りました。
アジアビジネスに関心を持つ,約50か国からの総勢約1,000人が参加する,弁護士ネットワーキングです。

クアラルンプル・レポートをお伝えします。


■ スカラーシップ委員長退任
私は,スカラーシップ委員会委員長を退任し,メンバーシップ委員会の副委員長に拝命されました。IPBAの運営に関わる13人の役員の一人となります。
IPBAスカラーシップにおいては,毎年1万ドルの予算で,途上国の弁護士や若手弁護士を,年次総会に招待してきました。その資金を援助していただいた,以下48名の日本の弁護士のみなさまに,改めて,ジャパンファンド委員会事務局長として,厚く御礼を申し上げます。(順不同,敬称略)
三宅 泰子/濱田 邦夫,三宅 能生/内田 晴康/伊藤 亮介,江尻 隆,奥野 善彦,国谷 史朗,熊倉 禎男,小島 秀樹,児玉 実史,坂井 秀行,高谷 知佐子, 中町 昭人,林 依利子,原 壽,樋口 孝夫,松嶋 英機,三宅 香織,森口 聡/Alexander Jampel,池田 靖,石黒 徹,石黒 美幸,石本 茂彦,牛嶋 龍之介,梅津 英明,江口 拓哉,江崎 滋恒,大石 篤,小田 大輔,蒲野 宏之,川端 雄太郎,川村 昭範,桑 原 聡子,小泉 淑子,小林 和弘,小松 岳志,柴田 勝之,竹之下 義弘,手塚 裕之,十市 崇,豊島 ひろ江,中務 正裕,早川 学,林 浩美,平野 惠稔, 渡邊 光誠,弁護士法人港国際グループ/北村 導人,栗田 哲郎,箕輪 俊介

■ Japan Night 開催
毎年恒例となっておりますジャパンナイトには,今年も約150人程度の参加者にご参加いただき,誠にありがとうございました。
今後も,引き続き,ジャパンナイトへのご参加をよろしくお願いいたします。

■ マレーシア事情
シンガポール赴任時代にマレーシアはよく通っていましたので,特に目新しいことはありませんでしたが,弁護士事務所の運営及びマレーシア社会について,現地の弁護士から,興味深い意見をもらいました。

要するに,マレーシアは,世界で唯一,「合法的な人種差別」をしている国。政治はマレー系がいわゆる「下駄を履かされて」います。中国系やインド系が,生存戦略として,ビジネスの世界で活躍しています。
最も興味深かったのは,マレーシアの評判のいい法律事務所のほとんどは,インド系か中国系であり,マレー系がない,ということであり,その事務所内の民族構成でした。

ある大規模事務所では,弁護士の99%が中国系で,事務員(秘書)の90%がマレー系,ということでした。要するに,
「一番上の立場に中国(インド)人,中間はマレー系,その下のブルーワーカーは外国人(バーなどで働いている人はバングラデシュ人が多い)」
という構図を見事に表していました。

■ 来年の年次総会はオークランド(NZ),4月上旬になります。

2016年4月19日 ダッカレポート

【コラム】

代表弁護士 中山達樹が,IPBAでマレーシアを訪れた際に,バングラデシュまで足を伸ばしました。

ダッカレポートをお伝えします。


バングラデシュの首都ダッカを訪れました。ASEAN諸国やインド・スリランカは行ったことがありましたが,その隣国バングラデシュへは行ったことがなかったので。

わずか一日の滞在だけなのでなんとも言えませんが,やはり「世界の最貧国」に数えられるだけあり,他のASEAN諸国とはひと味違った経験となりました。印象に残った出来事を示します:


・空港到着後,イミグレでは「職業は何だ? 弁護士? 滞在目的は? 観光? 弁護士が観光だって? はっはっはっ」と言われる始末。何がいけないのだか… まあすんなり入国できましたが。

・空港前のタクシー・車寄せが狭い… 全部で10数台くらいのキャパシティ… その辺のホテル程度。国の玄関ですよね…

・いわゆる公共交通機関としてのタクシーは,ない! 空港内にある配車手配を利用。ちゃんとしたホテルの名を言ったら「I know the hotel」と。ふむ。この国のタクシーでは,「行き先を知っている」ことが「売り」になるのであるな。

・空港を出て数百メートルで,30分程度の渋滞? 車が動かぬ… ジャカルタが世界最悪の交通渋滞かと思っていましたが,それを上回るかも。
・渋滞の理由:信号がない! 信号機が壊れている… 大きな交差点にはtraffic policeが旗を振って交通整理している。昭和20年頃の日本ってこんなだったんですね…

・日本車9割。旧英植民地なので左側通行。

・いわゆる車線,レーンはないです。3車線くらいの幅に,5車線を作って押し合いへし合い…

・クラクションの嵐。インドよりひどいか。道路では「常に」クラクションが聞こえます。

・車間距離狭い,というかほとんどない… バンパーの上にさらに追加でバンパーをみんな付けています。

・バスは,これでよく走るなという塗装… 4年前のミャンマーはヤンゴンを走っていたバスよりもひどいか。

・バスの上の屋根にも乗客が。

・流しのタクシーはありません。

・至る所で下水工事をしており,下水の匂いが街中を覆っているという感じでした。もちろん下水工事は人力でほとんど工機を使わない…
・黎明の朝5時半に外をジョギングしようとしたらホテルマンに「やめとけ,人が少ないので,危険だ」。

・バングラデシュ弁護士と待ち合わせは裁判所内のChamber(弁護士事務所)。手配した車の運転手とバングラデシュ弁護士が何度も携帯で電話してようやく会える。

「何時にどこ」でアポを取ってそのとおりに会えることは全く期待できない。携帯電話の威力って素晴らしい。

・バングラデシュ弁護士からは,多くの裁判官を紹介いただいたり,上にも置かぬ歓待をいただいた。みんなで写真を撮りましたが,バングラデシュ人に笑顔なし… 

いや,歓待されなかったのではないのです,「写真を撮られるときに歯を見せる」のは,「西洋化」の証なのです! 西洋化の進んだシンガポール人弁護士は全員,歯を見せます。日本人で歯を見せる人はまだ1割くらいでしょうか?

・最高裁の建物も,穴だらけの椅子が置いてあったりして,おい大丈夫かというくらいの設備…

・最高裁判事のお召しになっているガウン(法服)の袖もホツレ気味… サイン入り著書をいただいた。

・弁護士の初任給は月給2万円くらいらしいです。私の時間制報酬より安い。

・街では上半身裸に素足の少年も。いわゆるブルーワーカーも,上半身裸に素足。

・ショッピングモールというか雑貨店みたいなところ,奥にちょっと足を進めると,鶏を懸命に絞めている… うん,現代日本人って鶏をシメる場面に遭遇することってないなあ。その数メートル横でバングラデシュ人はお昼寝…

・35度を超えるような酷暑でしたが,みんな長ズボン(かスカート)で,短パンは一人もなし。そう,短パンも,西洋化の証。1988年=私の中学2年生くらいまで,日本の少年も真夏でもみんな長ズボンでした!


いやあ,行ってよかった! また来れる機会があるでしょうか?

2016年1月29日 腐敗認識指数ランキング2015年版

【コラム】

1月27日,2015年の腐敗防止認識指数(Corruption Perception Index)が,トランスペアレンシー・インターナショナルから発表されました。

アジアを中心とする海外主要国の,2013年・2014年からの過去3年の推移を見ると,以下のとおりです。

◆シンガポール 5位 → 7位 → 8位

◆日本 18位 → 15位 → 18位

◆マレーシア 53位 → 50位 → 54位

◆ブラジル 69位 → 69位 → 76位

◆インド 94位 → 85位 → 76位

◆タイ 102位 → 85位 → 76位

◆スリランカ 91位 → 85位 → 83位

◆中国 80位 → 100位 → 83位

◆インドネシア 114位 → 107位 → 88位

◆フィリピン 94位 → 85位 → 95位

◆ベトナム 116位 → 119位 → 112位

◆ミャンマー 157位 → 156位 → 147位


インドやインドネシアの躍進が目立ちます。タイはインラック首相時代の政情不安時にランキングを100位以下に落としましたが,復活してきたという感じです。

海外法務ではまだまだ汚職の危険は高いです。取り返しの付かない損害を被らないように,日本本社において,しっかりとしたグローバル・コンプライアンス体制を整えるように務めてください。

宜しくお願い致します。

2016年1月14日 スリランカセミナー

【コラム】

開催日が近づいて参りましたので,以下のスリランカセミナーにつき,再度ご案内を差し上げます。

2016年1月18日(月)午後
「スリランカ進出実務と『税務/会計』・『法務』の基礎」セミナー(企業研究会)

2016年1月26日(火)午後
「スリランカの投資環境・税務・会計・法務 進出における留意点」セミナー(日本ナレッジセンター)

2016年1月29日(金)午後
「スリランカ進出に関わる税務・会計・法務の特徴と課題」セミナー(経営調査研究会・金融財務研究会)

2016年2月3日(水)午後
「スリランカの投資環境・税務・会計・法実務」セミナー(金融ファクシミリ新聞社)

おそらく日本で初めての本格的なスリランカセミナーとなります。
スリランカの投資メリット・魅力・進出リスク・他国との比較等を知りたい方は、奮ってご参加下さい。

当事務所のクライアント様には,ほとんどのセミナーで割引料金をご利用いただけます。
遠慮なく当事務所問い合わせ窓口までご連絡ください。

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