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2014年12月31日 腐敗防止指数

【コラム】

トランスペアレンシー・インターナショナルという機関が毎年発表している,腐敗防止指数(Corruption Perception Index)の2014年版が発表されました。

日系企業の海外進出にあたり,興味のありそうな国の,昨年のランキングからの変遷を以下にみてみます。

シンガポール 5位 → 7位

日本 18位 → 15位

マレーシア 53位 → 50位

ブラジル 69位 → 69位

フィリピン 94位 → 85位

インド 94位 → 85位

タイ 102位 → 85位

中国 80位 → 100位

インドネシア 114位 → 107位

ベトナム 116位 → 119位

カンボジア 160位 → 156位

ミャンマー 157位 → 156位


特筆すべきは,①フィリピン,インドの躍進と②タイの復活,そして③中国の凋落でしょうか。その他はほぼ横ばいといえます。

① フィリピン,インドの躍進

これらの国は,腐敗が進んでいると認識されてきました。それでもタイと同レベルにまでランキングが上がってきたのは,国の発展とともに,汚職防止への要請もその分高まっているためと考えられます。

アキノ大統領やモディ首相の姿勢も,ランキング上昇に貢献しているかもしれません。

② タイの復活

タイは,昨年は軍事クーデターのせいでしょうか,一気にランキングを大きく落としていました。今年は,政権が安定しているからでしょうか,一昨年程度のランキングにまで復活しています。

なお,タイではクーデターは比較的頻繁に発生し,「国を転覆させる」という悪いイメージではなく,むしろ国を安定させる良いイメージで語られることがあります。

③ 中国の凋落

習政権が汚職防止に躍起になっているという報道がなされていますが,今年は大きくランキングを落としました。その理由や背景など,詳しい情報が入り次第,更新差し上げます。

中山達樹

2014年12月31日 海外腐敗(汚職)防止 ~1 アジアの汚職の現状~

【コラム】

海外腐敗(汚職)防止対策

グローバル・コンプライアンスの要請が高まっています。その背景には,

① 日系企業の海外進出が盛んになっていること

② 日系企業におけるコンプライアンスの要請が年々強まっていること

③ 米国等海外の取締機関による執行が厳しくなっていること

が挙げられます。

特に,米国の海外腐敗防止法(Foreign Corrupt Practices Act,“FCPA”)の取締りが厳しくなっていることや,イギリスの腐敗防止法(Bribery Act)が制定されるなどから,海外における腐敗・汚職防止の要請が高まっています。

注意すべきは,これらの法律の適用範囲・管轄が,極めて広いということです。たとえば,米国とは関係のない案件であっても,米ドルでの決済や米国口座を利用したり,米国にいる関係者とコミュ二ケーションをとったりしただけで,米国の法律が適用されかねません。

しかも,罰則が巨額になり,なかには数百億円もの罰金を科せられた企業も存在します。そのため,腐敗防止対策が,日本企業の死活問題となっています。

本コラムでは,特にアジアにおける,汚職状況を概観したうえで,日系企業が注意しなければならない点や,採るべき対策をいくつか挙げてみます。

1 アジアの汚職の現状

アジアでは,そもそも汚職が日本ほどネガティブなイメージで語られず,「水」や「空気」のような当然のものとして認識されているようなところがあります。

実際,私がシンガポールに駐在していた5年前も,周辺国のマレーシア等では,違法であるにもかかわらず,いわゆる「袖の下」がまかり通る状況にありました。

※ 2014年の腐敗認識指数は こちら をご覧下さい

では,そもそもなぜアジアでは汚職が蔓延しているのでしょうか。その原因を探ってみます。

(1) 文化的背景

アジアの多くの地域では,賄賂がむしろ「礼儀の一部」として認識されているようなところがあります。人と人との人間的な濃いつながりを重視する強力なコネ社会において,人付き合い・取引を円滑にするための「社会の潤滑油」であるというような認識です。

交際に不可欠な心づけを払わない場合,仲間の一員として受け入れられないようなことになるので,汚職が蔓延しているといえます。

その原因の一つとして,民度の低さ等から「コンプライアンス」という概念がそもそも希薄であることが挙げられます。

(2) 経済構造

アジアにおける経済格差は,日本の比ではありません。超富裕層とどうしようもない貧困層がいる中で,富める者が,「施し」をするような形でお金を払う構造は,社会を支えてきた互助精神ないし「喜捨」の美徳であり,容易に取り払うことはできません。

例えば,(物価や賃金水準が高騰しているにもかかわらず,)低賃金のままで据え置かれる公務員にとっては,賄賂が貴重な収入源,それこそ朝晩の糧のように認識されることもあります。心づけが,富の再分配のために重要な機能を担ってきたといえます。

(3) 法執行状況

先進国と異なり,アジアの多くの地域では,腐敗防止の法執行が厳然と行われてない状況にあります。汚職が「ローリスク」なのです。

ローリスク・ハイリターンであること,言葉を変えれば,「正直者が馬鹿を見る」状況にあることが,汚職が蔓延する一つの原因ということができます。

「ミイラ取りがミイラになる」かのように,本来は最もクリーンであるべき最高裁長官や汚職取締機関の長が,汚職で摘発されるような例もあります。

(4) 国の発展レベル

日本でも昔はそうでしたが,最も透明性が要求される政治家が汚職に塗れているような国では,民間企業レベルでの透明性・廉潔性を要求することは困難です。

例えば,日本でも40年前のロッキード事件のころ,政治の世界ではお金が飛び交うことがありました。しかし今では,政治家の資産が事細かく公開されるなど,政治の世界に対する国民の目は非常に厳しくなっています。

政治の世界で透明性が要求される段階を経て,民間レベルでも徐々にクリーンになってくるというのが,国の発展段階なのだと思います。

アジアでは,政治家が汚職をしている国はたくさんあります(例えばインドでは,半数ほどの政治家が,汚職で前科を持っているなどと言われています)。このような国では,民間レベルでクリーンになるまでには,相当の時間が必要と考えられます。

要するに,発展途上の国がアジアには多いということです。

2014年12月31日 海外腐敗(汚職)防止 ~2 注意すべき法規制~

【コラム】

2 注意すべき法規制

アジアの汚職の現状 で見たような状況において,どのような対策をすべきでしょうか。注意すべきは,適用される規制法が一つではなく,複数あるという点です。

(1) 各国の汚職防止規制

まずは,汚職が行われる国の法律が問題になります。例えば,タイで汚職が問題になるのであれば,タイの法律ということです。

公務員に対する汚職であれば,どの国でも,刑法などで,汚職を取り締まる規制を置いています。

日本人が汚職をする場合であっても,その汚職が行われた国の法律が,日本人にも適用されると考えてください。

(2) 日本の汚職防止規制

上記(1)の各国法に加えて,汚職の現場が海外であっても,日本人が汚職を行ったり,汚職に関与したりしてしまっている場合は,日本の不正競争防止法の適用が問題になります。

実際に汚職の行為が行われた場所が海外であっても,日本人には上記法律が適用されるためです。

「各国法が適用されて処罰されれば,日本法は適用されない」「日本法が適用されて処罰されれば各国法は適用されない」という関係になっていません。ですから,各国法と日本法の双方が重畳的に適用されるおそれもあります。

(3) 米国・イギリスの汚職防止規制

実際の汚職の行為が米国やイギリスとは関係のないアジアの国であったとしても,さらに,米国FCPA(海外腐敗防止法)やイギリス腐敗防止法(Bribery Act)が適用されるおそれもあります。

ア 米国FCPA

FCPAの適用範囲は非常に広く,米ドルでの送金や,米国の金融機関の口座を利用しただけで,FCPAが適用されるおそれもあります。

また,(米国の通信手段である)Gメールを利用しただけとか,メールのccに米国人が入っていただけ,その他スカイプでの交信に米国人が参加していただけでも,FCPAが適用されるおそれがあります。

さらに,物理的に米国とは関係なく協議した場合であっても,共謀罪(Conspiracy)が成立するおそれがあります。

このように,FCPAの適用範囲は非常に広範なので,「この取引についてはアメリカとは関係ないから大丈夫だ」と安易に決め付けるのは非常に危険です。

そして,米国当局が現在捜査中の案件は,150件以上に上ると言われています。世界で最も執行が活発に行われており,しかも年々,FCPAの執行は活発になっているので,大きな注意が必要です。

イ イギリス腐敗防止法

イギリスの腐敗防止法(Bribery Act)も,FCPAと同じように,広範な適用範囲を持っているといえます。

イギリスに関連する企業の関係者(associated person,例えば下請業者等)が汚職を行った場合,その汚職の場所がどこであっても(場所的限界が無限定),そのイギリス関連企業が,賄賂防止懈怠という犯罪に問われることがあります。

この賄賂防止懈怠というのは,要するに,コンプライアンス体制を整えなかったという不作為が,犯罪になるということです。

したがって,単に関係者による汚職を防止するだけではなく,会社としてコンプライアンス体制を整えておく必要があります。


以上のように,海外腐敗防止においては,(1)汚職が行われた各国の法律のみならず,(2)日本法,及び,(3)アメリカ法やイギリス法まで,絡んでくることがあります。


これらの法律を正確に理解し,何が犯罪で,何が犯罪ではないのかを十分に理解しておく必要があります。

2014年12月31日 海外腐敗(汚職)防止 ~3 具体的な腐敗防止対策~

【コラム】

海外腐敗(汚職)防止対策

3 具体的な腐敗防止対策

2 注意すべき法規制 で見たように,様々な国の腐敗防止規制に配慮しなければなりません。では,具体的にはどのような対策を採るべきでしょうか。

(1) 経営トップの姿勢

まずは,経営トップが断固とした汚職撲滅の姿勢を示すことが必要です。

海外の現場で汚職が発生するのは,現場の担当者が,「(一定の期間までに)ビジネスを進めるべきという会社上層部からのプレッシャー」と「賄賂を支払わなければ満足の行くビジネスができない」という両者の要求の板ばさみになっているから,といえます。

ところが,会社上層部から「汚職しないことを絶対条件に,その国へ進出せよ」という指令が出ていた場合はいかがでしょうか。担当者としては,「汚職しない」という条件がある以上,一定期間までに汚職までしてビジネスを進めるべきというプレッシャーをそもそも感じることがありません。堂々と贈賄を拒むことができるのです。

このように,汚職が発生する構造から考えても,経営トップが断固たる姿勢を示すことは非常に重要です。

(2) コンプライアンス体制の構築

経営トップが抽象的に腐敗防止を謳っているだけでは十分ではありません。アジアでは汚職が蔓延している以上,どうしても「郷に入らば郷に従え」的な甘い肌感覚が身についてしまい,汚職に手を染める誘惑に打ち克つことが難しくなります。

そこで,会社として,しっかりとしたコンプライアンス体制を構築することが必要となります。この体制構築義務は,日本の親会社の取締役の,善管注意義務の対象にもなると理解した方がいいでしょう(会社法施行規則100条参照)。

具体的には,予算と人員の拡充が大事です。特に,

① コンプライアンス担当者を,法務部と兼任にするのではなく,専任にする,とか,

② コンプライアンス担当者の他部署からの独立性を確保し,調査権限を強化する

などが挙げられます。

いったん腐敗防止規制に違反した場合,会社にとって取り返しのつかない最悪の結果(数百億円の罰金という事例もあります)が発生してしまいます。

費用対効果/時間対効果の関係から考えても,事前防止対策として,コストや時間は惜しまないようにしたいところです。より具体的には,時間とコストはかかりますが,海外関連法人に,抜き打ち監査を行うなどが一つの効果的手段として挙げられます。

(3) 定期的な見直し・トレーニング 

  体制を構築してそれで終わりというわけではなく,日々の管理やフィードバックも大事です。

  具体的には,

① 数か月に一度は,現場社員に対し,最新情報を与えて研修を受けさせる

② 常日頃から,うるさく思われるほどコンプライアンス関係の社内倫理を叩き込む

③ 現場の社員に,コンプライアンス体制に主体的に取り組ませる努力をするように仕向ける

④ 汚職に関わるような出納管理については,適切な上司の事前決済を得る

などの工夫が考えられます。

  ある有名企業では,海外公務員に対していわば心づけ・社交的儀礼として金銭・祝儀を交付したりする際に,事前申請書面を用意して決裁事項にするのみならず,海外公務員との折衝・面談をする際にも,折衝の動機や日時等を決裁事項にしているところもあります。

  担当者に漫然と任せるという消極的な姿勢では,いつ何時,汚職の誘惑に負けるかもしれないということを認識することが必要です。

(4) 適切なリスク評価 

  このような定期的なコンプライアンス体制の見直しを行う際には,①その国のどの地域,どの業態,どの取引において,どれくらいの汚職のリスクがあり,また,②汚職が発覚した場合のリスクがどれくらい大きいのか,というリスク評価を適切に行う必要があります。

  そして,汚職リスクの発生の可能性が大きい分野や,リスク発覚の場合のインパクトが大きい取引に対して,大きな予算・人的リソース・時間を掛けて,リスク発生を抑えるための工夫をすることが必要です。

  このようなリスク評価を適切に行うためには,日ごろからの綿密な情報収集を行うことが必要です。グローバル・コンプライアンスについては,どうしても情報が不足がちになることから,情報収集のためのアンテナを張り巡らせておくことが大事です。

以 上


2014年12月31日 タイ民商法の改正

【コラム】

保証等に関するタイの民商法典の改正が,平成27年2月12日から施行される予定です。主な改正点を以下に挙げます。

1 681条

将来または条件付の債務に対する保証については,債務の発生原因,内容,保証金額上限等が特定されなければならない。

保証契約には保証金額が明示されなければならず,保証人は,保証契約書に記載された債務のみを負担する。

2 681/1条

保証人が債務者と連帯して債務を負う旨の契約は無効とする。

3 686条

債務者が債務不履行となった場合,債権者は,債務不履行の日から60日以内に書面で保証人に通知しなければならない。


以上のとおりですので,タイにおける債権回収において,安易に保証契約を用いることにはリスクが伴います。日本でも,保証債務を限定化する傾向にありますが,それと軌を一にするということができます。

上記改正法の詳細等,追加情報が入りましたらまた更新差し上げます。 

2014年06月25日 カナダ・レポート -IPBA年次総会-

【コラム】

中山達樹です。5月にIPBA(環太平洋法曹協会)の年次大会でカナダ・バンクーバーに出張して参りましたので,簡単にご報告します。

■ IPBAとは

IPBA(Inter-Pacific Bar Association,環太平洋法曹協会)には,環太平洋地域のビジネスに関心を持つ世界中の弁護士が参加しています。現在会員数は世界で1300名,日本で300名程度です。

日本人(当事務所三宅能生弁護士)が中心になって創設したこともあり,日本人が最大の会員数を占めています。日本人が創設して日本に事務局がある,世界的にみても稀有な国際団体です。私は,この団体を通じて,日本人の国際的プレゼンスを向上させることに一つの使命を見出しています。

毎年5月ころに環太平洋地域で行われる年次総会(持ち回りで各国を周り,昨年はソウル,来年は香港,再来年はクアラルンプルで開催)には,1000人程度の弁護士が世界中から集まり,交遊を結んだり法律情報を交換したりします。

海外法務では,現地の弁護士との提携がどうしても必要になることから,この団体を通じてのネットワーク作り,すなわち,どのような弁護士を知っているかが非常に重要になってきます。今回も,ベトナム,マレーシア,インドネシアなど,主にアジア各国の弁護士と知り合いになってきました。

■ スピーカー

私は今年で7年連続の参加となりました。これだけ長く参加していると,スピーカーを務めたり,司会を務めたり,主体的な活動ができるので,責任は重くなる反面,より積極的に楽しめるようになりました。

今年は,Legal Practice Committeeの"New Tools for Non-Techie Lawyers"というセッションにおいてスピーカーを務めました。聴衆を笑わせるためにいくつか小ネタを仕込んで臨み,何度か笑いを引き起こせたので胸を撫で下ろしています。

またスピーカーを務める機会がありましたら,ユーモアセンスを磨いて聴衆を笑わせ,日本人ここにありということを示せればいいなと思っております。

■ Japan Nightの主催

年次大会の初日の夜には,日本人弁護士が主体となり,知人の海外弁護士とともに,カジュアルな飲み会を行います。今年も80名程度の参加を予想していましたが,予想を大きく超える,150人程度の方にご参加いただき,誠に楽しい会となりました。年次総会で最も気楽に楽しめるセッションとして,今後も盛り上げて行きたいと思います。

来年の香港で行われる年次総会では,日本から近いため多くの日本人の出席が予想されます。Japan Nightには250人くらいの方に集まっていただければと期待しております。

■ バンクーバー

最後に,バンクーバーの街をご紹介します。

あまりにも自転車フレンドリーな街であることに驚きました。街中至るところに自転車専用レーンがあり,車も自転車に道を譲っていました。レンタルサイクルも多く,私も自転車をレンタルしてStanley Parkという緑が広がる地域まで足を伸ばしてきました。潮風を感じながらのサイクリングは,誠に心地よかったです。

街の人の人当たりもよく,東洋系の人も多く見かけました。夜の治安も不安を感じることはありませんでした。日本食レストランも多く,日本人がワーキングホリデーや短期留学等でよく訪れることの理由が分かった気がしました。Ichibankan (一番館)という焼肉屋の看板が「一館番」となっていたのには笑えました。

ただ,レストランのウェイターが,料理の味を頻繁に訊いてきて,美味しいと回答すると,何度も awesomeと返すのには閉口しました。北米の若い男性にawesomeは流行り言葉のようで,日本語では「いいね,イカすね,すごいね,ヤバいね」に相当するのだと思います。

なお,チップを15-20%も払わされることがあるのは,日本人には慣れにくいところと思います。クレジットカード決済をするときにも,チップの金額を選択するのですが,原則として15%くらいのチップが設定されていました。

裁判所も見学して来ました。公開法廷の原則からでしょうか,法廷のドアを常に開けたまま弁論をしているのが独特でした。廊下の声が法廷内に入ってしまうので,廊下では声を小さくすることが要請されていました。

以上

2014年03月06日 タイ・レポート3

【コラム】

中山達樹です。タイに出張してきましたので,タイの最新情報などをいくつかご報告します。

■ バンコク厳戒態勢

今年1月21日にバンコクで非常事態宣言が出され,反体制派のデモ等で不安視されていますが,本日現在,ビジネスに影響が出るようなデモはほとんどないと言って過言ではないようです。封鎖されている地域も,首相府近辺に限られ(商業地域の主要交差点では封鎖が解除されました),いわゆるビジネス街には影響はありません。

私も今回の出張で幾つかのオフィスや法律事務所を訪れましたが,道路封鎖のために通常より渋滞するなどということは全くなく,むしろ普段より交通量は少ないと感じました。

■ ビジネスへの影響

もっとも,官庁のいくつかはまだ実際に封鎖されているため,稼動はしていないところもあるようです。実際,現在私がサポートしている案件において,タイのある政府機関からの書類入手を試みていますが,反体制派デモに基づく封鎖により当局が稼動していないため,書類が手に入らないというケースもあります。

タイ事情通のある知人によれば,今回の政情不安もあり,日本からタイへの投資は今後1年程度は伸びは期待できないのではないか,とのことでした。

JETROの記事 にもありますが,2億バーツ超のBOI(タイ投資委員会)案件は,承認機関が稼動していないため,停止しています。上記金額を超える案件でのBOIの恩典を受けることは期待できないということです。

■ M&A活況

タイには買収対象企業が多くないこともあり,M&Aは活況とはいえない状況でした。しかし,三菱東京UFJ銀行のアユタヤ銀行買収に代表されるように,日系企業がM&Aに積極的になってきており,飲食等の小売業,電子機器業界で特にM&Aが盛んになってきているようです。今後もこの勢いは衰えそうにないといえます。

■ タイ政治

インラック首相が,支持基盤である北部(農村部)との結びつきを強め,南部(バンコク等都市部)の反体制派との対立を強めているとの報道もあります。

タイの政治は,タクシン元首相とその実妹の現インラック首相が,タイ北部の農村部を基盤とし,南部都市部のエリートと対立している,という構図です。簡単にお示しすると:

 北部=農村部=インラック首相(実兄元タクシン首相)=赤シャツ

 南部=都市部=ホワイトカラー・エリート=黄シャツ

という対立があります。日本の1970年代の角福戦争のようですね。地方農民から支持された田中角栄と東大法学部卒の福田赳夫の対立に近いでしょうか。もっとも,角栄が高等小学校卒のいわば叩き上げであったのに対し,タクシンは警察官僚出身という違いはありますが。

ブミポン国王(現86歳)の健康状態が芳しくないことにかんがみ(昨年12月の国王誕生日でも,矍鑠とした姿を国民に示すことはできなかったそうです),国王の後継者が確定していないと目されていることから,後継問題で国が南北に二分されるのでは,という危惧も囁かれています。

国王の後継者としては,国民に人気がある王女と,あまり人気のない皇太子の間で揺れており,それぞれを異なる支持基盤(軍など)が支えていることなどが,後継問題に複雑な要因を加えているようです。

■ タイの汚職

インラック首相は,コメ買取制度に関して,NACC(国家汚職防止委員会)から捜査を受けています。このように,国家のトップが汚職で追及されるというのも,1970年代あたりの日本を思い起こさせます。

他の分野よりも国民の目に晒されることが多い政治の分野に最も透明性が要求されることから,政治の分野からまず汚職が少なくなり,徐々に他の分野にも透明性・清廉潔白性が広がるのではと考えております。

仮にそうだとすれば,タイのように汚職がまだ政争の具とされる国では,末端のレベルまで汚職がなくなることは,まだまだ時間がかかりそうだという気がします。

■ 日本文化の浸透

「ラーメンキング」や「ラーメンチャンピオン」などのラーメン屋台村があったり,BTS(高架鉄道)車中の映像広告でも日本製品が頻出していたりなど,日本の文化・経済の影響がどんどんタイに浸透しているのを感じます。タイに日本食レストランは2,000店もあり,タイにいる日本人プロサッカー選手は40人もいるそうです。

また,巷にある海外観光の広告でも,最も大きく取り上げられているのはアメリカや欧州ではなく日本でした。日本への憧れを強く感じました。

一人当たりのGDPが上がり,タイはこれから消費文化がどんどん発達する国です。日本の文物が今後もどんどんタイで愛されていくであろうという期待を感じました。

以上

2014年02月21日 IPBA重鎮たちとの宴

【コラム】

中山達樹です。当事務所の三宅弁護士らが中心となって結成したIPBA(環太平洋法曹協会)を,事務局として永らくIPBAを支えてきた平野緑さんが,昨年事務局から退職されたことに伴い,平野さんの慰労会を行いました。

IPBAの会長と事務総長を務められた先生方にもご出席いただき,大変楽しい夜になりました。

IPBAは,日本人が創設し,日本人が中心となって運営している,世界的にも稀有な国際団体です。今後も,日本人としての誇りを持って,IPBAの維持・発展に貢献できればと思っています。     

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